印鑑業界に“朗報”:筆記体の教育を復活する米国

山田 肇

米国では初等中等教育段階からパソコン・タブレットを教室で用いている。ネット情報を調べるだけでなくノートもパソコンで取るので、子供たちはキーボードに慣れている。その代わり、筆記体の書き方は教えないので子供たちは「独立宣言」が読めないと、雑誌Timeが2014年に伝えた。大学生のノートは多くが活字体で書かれているという2010年の記事もあった。

こんな子供たちは署名(autograph)が書けない。署名が本人確認に広く用いられている米国では署名が書けなければ生活できない。そこで、今、筆記体教育を復活させる動きがあるという。

「トランプ大統領の署名」Hyperallergic Mediaより

メイン州では、2月14日に、筆記体の復活について州議会で公聴会が開催されたそうだ。これを伝える地元紙によると、アラバマ州とルイジアナ州が筆記体復活の法律を昨年可決し、すでに14州が筆記体の指導を初中等教育で義務としているという。

筆記体を強く支持するグループは、5歳児の脳のMRIを取ると、文字や図形をフリーハンドで描いた子供たちだけに「読み取り回路(reading circuit)」が出現したとの研究成果を発表している。キーボードでノートを取った子供は、筆記体を使った子供よりも概念的な問題の成績が悪いという研究もあるという。

こうして米国では筆記体教育が勢いを取り戻している。わが国の印鑑業界も「長い伝統」を主張するだけではなく、脳の発達に役立つ証拠を探してはどうだろうか。

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