朝日新聞が3月18日から4回「危機の統計」を連載した。第1回はペットの販売規制を生後7週から8週に強めるかどうかについて、環境省の統計が恣意的だった。第2回は基幹統計「経済センサス」でも国民の協力意識は薄く、人手に頼って回答を収集する現場の苦労は尽きない。第3回は統計担当の職員数は減少の一途をたどっている。第4回は経済見通しなど政府の意向を統計部門が忖度しているのではないか、という内容。連載は次のようにまとめられている。
国の財政、経済運営の方向性を決める統計や見通し。ときの政権の意向から本当に独立しているのだろうか。
連載を通じて朝日新聞は「政権への忖度」を強調したいのだろうが、統計部門が独立したとしても、少ない職員数で大量の統計調査を国民の協力が得られないままに進める限界的な状況では期待する精度は得られない。本当に考えるべきは、限界に達した統計部門をどう改革するかである。
なぜ、統計部門は調査票を紙で配り人手で収集する方法に固執するのだろうか。それは「過去との比較が価値」という統計の性質があるからだ。たとえば、わが国GDPの絶対値よりも、GDPが増加傾向にあるか縮小しているかのほうに国民の関心は向かう。
過去と比較するには、過去と同じ方法で調査する必要がある。この考えを捨てられないから、少ない職員数で大量の統計調査を国民の協力が得られないままに進めることになる。
2018年秋の行政事業レビューで「統計調査のオンライン化(総務省)」と題して「全国消費実態調査」と「経済センサス」の進め方について議論した。「全国消費実態調査」については家計簿アプリを利用してのデータ収集、「経済センサス」については税務署や年金事務所に企業が提出したデータの利用によって、より精度よく家計や経済の実態が把握できるのではないかと多くの委員が主張した。しかし、総務省の姿勢は頑なで、今までの方法を主に調査するという姿勢に終始した。
データの活用を主にすると、過去の統計調査との連続性は一度切れてしまう。しかし、そのほうが、今後ますます深刻化するに違いない統計部門の疲弊を抜本的に改善する。