新しい年号が始まった。だから改めて、次の時代をどうしたいか、考えてみたい。
令和が平成同様30年くらい続くと考えると、1989年から今くらいの技術や価値観の跳躍を期待できるはずだ。
未来予測は常に外れることが運命づけられているので、これらは予測ではなく、僕が個人的に創り出したい未来と言って良い。
さあ、見てみよう。
ライフスタイル
・手動運転用の自家用車を保有することが無くなり、自動運転車がシェアされることで公共交通機関化する。交通事故死が激減する。
・車が動くオフィスとなり、移動時に仕事が可能になるので、都市部中心では無く自然豊かな地方に住み、2〜3時間かけて都市に快適に通勤するライフスタイルが取れるようになり、幸福度が上がる
・フルタイム概念が希釈化し、複数の会社や団体、プロジェクトに所属する多元的所属社会になる。平成にあったブラック企業は人口減少社会でより貴重になった労働者にそっぽを向かれ絶滅
・夏は北海道、冬は四国というように、季節ごとに住む場所を変えるアドレスホッピングが一般的に。人口減少に悩む地方も、人口を都市部と「シェア」することが可能に。仕事もテレワークが当たり前となり、テレワークという言葉自体も死語に。
・アドレスホッピングに合わせて、子どもの学校の仕組みも変化。平成時代はいちいち「転校」しなくてはいけなかったが、学籍を持ち運びできるようになり、季節ごとに学校を変えられる。
子ども・子育て・教育
・待機児童は無くなる。全ての子ども達が、3歳から幼稚園か保育園かこども園等に行く。事実上の義務教育開始年齢の引き下げが行われる。
・児童虐待の社会的認知が広がり、社会全体で虐待死を防ぐよう、情報連携と機関連携の取り組みが進み、虐待は激減。里親・養子縁組も珍しいものでは無くなり、たくさんの養子を育てることはセレブの証になる
・児童福祉は申請主義を脱却し、家庭状況がリアルタイムに補足され、「人の顔をした福祉サービスが向こうから来てくれる」時代に。全ての家庭に担当ソーシャルワーカーが着き、必要なサービスを紹介し、問題が起きれば一緒になって解決していってくれるように
・男性産休が義務化され、新入社員が研修を受けるように、男性も産休・育休を取って共育て要員となるのが当然に。父親業への参入人口が増えることによって、これまでの非合理な強制加入PTAに疑問が呈される頻度が増え、必要な都度、有志がコミットする形態に変化していく
・実習生という欺瞞的な制度は廃止され、移民としてしっかりと労働法が適用されるように。移民の子ども達に保育園・幼稚園・公教育が最適化され、多言語対応されるようになる。自ずと主担任・副担任制度が敷かれ、より手厚い教育が日本人・移民子弟の双方になされる
・テクノロジーの進歩によって、重症心身障害児の意思表示やコミュニケーションがより可能に。障害があっても様々な表現やコミュニケーションが可能となっていく。障害児保育・障害児教育はAIやICTと組み合わされ、専門性を高めていく
・平成時代では学校に出されていた補助が「子ども1人あたり」の形に変わり、さまざまな民間学校が設立される。その子どもにとって最も望ましい教育の形が競われ、カリキュラムはテーラーメード化される。教科ごとに最適な先生が教え、進み方は子どもそれぞれとなるので、「担任の先生」や「学年」という概念が死語になる。
・国立大学は「どこのキャンパスで授業を受けても良い」ようになる。私立も大学間提携が進み、ネットワーク型になっていき、生徒は複数のキャンパスの授業から参加したい授業やゼミを選択することに。また、大学は若年層だけでなく、学び直しのための機関としてアイデンティティを変え、あらゆる年代層が学習・研究する機関となっている
医療・高齢者福祉
・ウェアラブルならぬ、埋め込み(エンベッド)型の医療チップを政府が支給。義務化された予防接種時に埋め込む。各自の健康データをかかりつけ医療機関と共有でき、医療ニーズを最適化できるように
・地方部での医療資源の枯渇によって、遠隔医療が大幅に解禁。各エリアの中心都市に集約された医療資源に、ICTを通して遠隔的にアクセスする構造に移行。症状をメッセージングツールで送り、AI診断の後、近くのドラッグストアで処方薬を受け取るように
・医療の発達に伴い、健康年齢を計測し高齢化を判断。様々な埋め込み型医療デバイスによって健康状態がエンハンスされ、実年齢が意味をなさなくなる。一方、デバイスのアップデート等の可否が健康に直結するため、経済格差が医療格差とならないよう、様々な医療再配分施策が講じられる
・高齢者の孤立が社会問題化したことで、社会への参画度合いがポイント化・見える化されるようになる。地域の様々なアクティビティや団体は、関係性ポイントを引き上げることによって補助が入る仕組みになったことから、社会的包摂を競いあうように。
・人工子宮技術の発達によって、妊娠可能年齢と関係なく子どもを授かることができるように。
産業・経済政策
・「選択と集中」政策の失敗に文科省は気づき、基礎研究や研究開発投資に広汎にバラまく政策に転換。再び科学技術立国に
・いち早く労働人口が希少化したことで、自動・無人化技術が発展。無人店舗の前提である電子マネーが広がり、小売店舗の9割が無人化していった
・5Gを基盤とした遠隔操作技術が社会のあらゆるところに広がる。無人船・地上走行型配達ドローンによって物流の生産性は向上。また、農業機器の多くも自動化・省力化される
・耕作放棄地や空き家等は、一定年限を過ぎると共同体の元に還されるよう財産権の概念自体が変更される。それによって様々な未利用土地の権利問題がリセットされ、新たな開発が可能となる
・起業家を自殺に追い込む連帯保証人制度が犯罪とされるようになり、より一層起業がしやすく。副業で起業家、連続起業、社会起業と営利起業のミックス等、より起業形態のバリエーションが広がる
・観光と定住の間のような産業が生まれる。数ヶ月滞在する観光客が、ミニ定住するためのインフラを各自治体や地域が競い合う
・平成において日本のソフトコンテンツを政府主導で世界に売り込むことは失敗したが、民間企業や起業家が果敢に世界に雄飛し、「憧れの国」ナンバー1に。
ジェンダー・家族・文化
・移民の浸透によって、日本の文化と移民の文化が混じり合った新たな慣習や文化が生み出される。フェス化した盆踊り等
・選択的夫婦別姓に反対し続けてきた政府がついに折れ、別姓解禁。女性の議員率・管理職率も平成と比べ飛躍的に向上し、ようやく先進国並みに。また、男女の賃金格差もようやく解消。女性総理誕生が令和の象徴的事件に。
・養育費不払いが子どもの貧困の要因の一つと問題視され、養育費不払い=経済的虐待と見なされる。養育費不払いにペナルティが課されると同時に、政府が代理徴収し、徴収不可の場合は代理給付する新たな制度が施行。子どもの貧困が緩和。
・同性婚解禁、事実婚の広がり等によって、家族のあり方はますます多様化。法律婚と事実婚を組み合わせた複婚も市民権を得ていく。また、人生100年時代になったことから、人生において複数回パートナーシップを組んでいくことも、許容されるように。
・ジェンダーイコーリティが平成期の比では無いくらい是正されたことによって、男性も「男性らしさ」のくびきから自由に。女装や化粧も肯定され、ネット空間上の性別も選択できるように。
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さぁ、どうだったろうか。
みなさんには、みなさんが実現したい令和の形があるはず。
ぜひ、それを発信してみては如何だろう。
我が国には「言霊」という言葉がある。言葉にしたものは、その瞬間から、現実になっていくよう小さく羽ばたいていく。もしかしたら、あってほしい未来を呟くことが、我々が我々の令和を生み出すことにつながるかもしれない。
編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2019年5月1日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。