今週は、米中貿易摩擦のホット・イシューを斜め切りにしてお伝えしました。締め括りとして、関税収入見通しをお届けします。
関税収入は、4月までの2019年度(2018年10月~2019年9月)で399.31億ドルでした。前年同期比では82.8%と、大幅増となっています。
トランプ大統領による一連の追加関税措置発動により、税収が拡大したことは言うまでもありません。①2018年1月:洗濯機・太陽光パネル、②同年3月:鉄鋼・アルミ(カナダ、メキシコは同年6月に導入、2019年5月から撤廃)に加え、2018年7月からは対中追加関税措置第1弾(340億ドル相当)、第2弾(160億ドル相当)、第3弾(2,000億ドル)に踏み切りました。これに、2019年は5月から第3弾の追加関税引き上げ(10%→25%)、さらには約3,250億ドル相当の中国製品に25%を課す第4弾も控え、今後も関税収入が拡大すること必至です。
では、今年度を始め追加関税措置が続けば関税収入がどれほど拡大するかといいますと…。
米議会予算局(CBO)によれば、2019年度は前年比79.2%増の740億ドルとなる見通し。2027年度には、1,000億ドルの大台を突破するといます。しかも、CBOによる試算の前提条件は2018年12月時点で発動済みの追加関税が継続した場合ですから、対中追加関税措置第3弾の税率引き上げ、第4弾は含まれていません。トランプ大統領は、中国が関税を1,000億ドル以上支払う可能性があると発言していましたが、仮に第4弾まで断行すれば、中国を含めた関税収入そのものの1,000億ドル超えは、もう少し早まるかもしれません。
半面、トランプ大統領は民主党は4月にインフラ投資の法案作成で合意していましたが、関税収入が拡大しても寄与はわずかで、インフラ投資への道を開くことは難しそうです。その上、5月22日に開かれたトランプ氏と民主党幹部との会合では、ペロシ下院議長のロシア疑惑をめぐる事実隠蔽コメントを受け大統領が途中退席する一幕も。インフラ計画も米中通商協議並みの膠着を迎えるのでしょうか?
(カバー写真:futureatlas.com/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年5月23日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。