6月4日で天安門事件から30年になります。我々は、日本のすぐ隣の国で、無辜の市民が自由を求めたために虐殺された30年前のこの出来事を改めて検証し、犠牲となられた方々のご冥福をお祈りするとともに、中国共産党が支配する中国という国の異常な本質をきちんと見つめねばならないと思います。
米国国務省の報道官が先日記者会見で言及したように、当時から現在に至る中国国内における情報統制の結果、何が起こったのか全く我々は知らされていないというのが実態です。中国共産党・政府はその隠蔽を図り、情報公開を拒んでいます。その態度こそが、実際の虐殺がすさまじいものであったことの何よりの証拠という見方もあるかもしれませんが、共産党政権が崩壊するまで、真実が明らかになることはないのかもしれません。
中国国内の現在の人権状況は言うに及ばずですが、日本政府の一員として中国側から内政干渉と非難される口実を与えるのは得策ではありませんので、ここでは外交問題に絞って書かせていただきます。
中国という国は北朝鮮の唯一の同盟国で、北朝鮮の体制崩壊をさせないために国際社会の対北朝鮮制裁の実質的な抜け道となるようなことをしながら、対外的には「北朝鮮が言うことを聞かない」と弁明して言い逃れをしてきたというのが実態です。第三国との交戦の場合に軍事支援する義務を負う中朝相互援助条約を、その条項そのままに更新していることからも、中国の真意は明らかです。一時期、金正恩体制よりも予見可能性が高い体制への転換を試みようとしたともいわれていますが真相は明らかではありません。少なくとも、現状においては、金正恩との信頼関係、中朝同盟を重視しているように見られます。
また日中友好と口では盛んに言いながら、いまだに尖閣や東シナ海での一方的な挑発行為を全くやめていません。尖閣周辺海域への中国公船の侵入のペースや、東シナ海のガス田での行動などをみれば、むしろエスカレートしている面もある。同じことは南シナ海や台湾海峡でも起こっています。
中国は何をしても、自分たちは正当防衛なのだ、途上国なのでやむを得ないのだ、自分たちを攻撃する他国のせいでやむを得ず防御しているだけだ、と言います。
しかし、実態としては、常任理事国で唯一、核弾頭の数を近年においてもなお増加させているのが中国です。また軍事費の極端な増加にみられるような軍拡を行い、実際の軍事的な挑発行為を行い、勝手に領海法という法律を国内で作ってそれを根拠に自らの領域を勝手に拡大し、そこに手を出すものに対しては何をしても正当防衛だと言い募っているのが現実です。
旧ソ連が北方領土でやり、ロシアがクリミアで行ったような、力による現状変更を是とし、むしろ変更する自分たちに大義があり、それを非難する諸外国が中国の正当な権利を侵害している、と言わんばかりの動きが、特に習近平主席になってから目立ちます。
このような状況下にあって、そろそろ我々は、中国の言動に騙される愚を繰り返すことをやめねばなりません。中国の行動をきちんと見ねばならない。北朝鮮に対するのと同様、中国に対しても「何を言っているか」ではなく「何をしたか、どんな行動をしたか」だけをみる必要があります。
2017年10月の第19回中国共産党全国大会以降、中国軍の様々な動きは正直異常と言っていいレベルになっています。今般は国務委員の立場にある国防大臣が、台湾侵攻に関する発言をするに至っています。台湾、台湾海峡は日本にとっても、アメリカの安全保障にとっても生命線です。
米国においては、中国の異常性についての認識がようやく与野党関係なく浸透してきたような印象を受けます。今後、中国は自国の経済的な市場の大きさをてこにして一層国際社会において横車を押すような行動を加速していくと思われます。ここにどう対応するかをG7などで協議することも必要ですし、わが国としては日米同盟をさらに進化させるとともに、アメリカのアジアにおけるプレゼンスの重要性を米国政府に再認識してもらうような努力を続けることが必要です。
日本よりも軍事的経済的に中国に対して脆弱なアジアの国々は、日米がどの程度真剣に中国からの圧力に対峙してくれるかを、自国の命運をかけて見守っています。
天安門事件から30年を迎える状況下で、中国側に日中関係を真剣に改善させる考えなどなく、米中関係が厳しくなる中で、口先だけで日本にアプローチしているだけである実態を、そして中国共産党の本質を改めて我々は注視していかねばなりません。尖閣における執拗な主権侵害、東シナ海の中間線付近での執拗な主権侵害等々、実際の中国の行動を見なければ取り返しがつかないことになりかねません。
編集部より:この記事は、財務副大臣、衆議院議員の鈴木馨祐氏(神奈川7区)のブログ2019年6月3日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「政治家 鈴木けいすけの国政日々雑感」をご覧ください。