ブログでもご報告していましたが、5月に各省の業務量調査を元に、全省庁の業務の抜本的な見直しと、定員管理の構造的な問題の見直しを提言していました。それを踏まえて、今回、最終提言として、今後人生100年時代に対応して厚生労働分野における改革が増えることから、各法案を十分に議論できる環境をつくることを目的とし、厚生労働委員会を二つの委員会に分けること、厚生労働省に特命担当大臣を配置すること等を以前の提言に加え、まとめました。提言本文を下記に掲載したのでぜひ読んでみてください。
霞が関の政策立案部署等の業務量調査結果と今後の対応
令和元年6月18日
自民党行政改革推進本部
行政では、かつては有効に機能していた行政手法、規制、組織などが、新たな社会のニーズや状況に十分対応できないことがしばしば生じる。担当の行政機関や関係者の間では、それまでのやり方などが当たり前になり、知らず知らずのうち、現実社会との乖離が生じてしまうことがままある。また、旧来の規制・制度や組織などが既得権を生み出し、それが変革を阻むこともある。
行政改革は、こうした行政の機能不全を見出し、解決し、より良い行政を実現するための包括的な取組である。自民党行政改革推進本部では、昨年来、公務員制度改革、規制改革、国立大学法人改革、公益法人等改革、官民連携推進、行政関与のあり方の見直し、などの課題に取り組んできた。
それらの根底にある課題として、行政を担う霞が関の業務量の実態解明にも取り組んだ。これまでの霞が関では、古くからの仕事を十分整理・縮減することなく、これらが「根雪」のようにたまったまま、新たな社会ニーズにも対応を求められてきた。これが無理と歪みを生じ、さまざまな分野での変革が遅れる大きな要因ともなっていた。
令和の新たな時代を迎え、「根雪」や旧弊をそぎ落とし、新たな社会ニーズに迅速に最善の対応を常にできる、活力と実行力に満ちた行政を実現するため、以下の提言を行う。
自民党行政改革推進本部(以下、自民党行革本部)は、昨年末、全省庁を対象に、霞が関の政策立案部署等の業務量調査を初めて行い、この程その結果をまとめるとともに、それを踏まえた各省庁別ヒアリングを行った(調査内容及び結果は別添)。
その結果、まず明らかになったことは、殆どの省庁においてかなりの超過勤務が常態化している勤務実態であった。
そして、さらに明らかになった重要な事は、省庁間での業務量の跛行性が大きいのみならず、職員一人当たりのワークロードともいえる、一定定員当たりの業務量のばらつきが、国会対応、政省令対応、予算執行対応、審議会対応、訴訟対応、など、相当の負担を伴う業務において、省庁間で桁が異なるほどの顕著な差異が生じていることであった。
機構・定員管理は、「国の行政機関の機構・定員管理に関する方針」(平成26年7月25日閣議決定)に基づき、業務改革の取組を踏まえながら5年毎に各府省の定員合理化目標数を決めるとともに、各年度の定員管理は、各年度の「人件費予算の配分方針」により重点化が図られる仕組みとなっている。
しかし、そのプロセスは、年度ごとの重点施策等を定員に反映させる、いわば短期的、表層的な対応に止まっていると言えよう。急速かつダイナミックに変わりゆく世界の諸情勢やイノベーションの進展を受けた真の行政需要や、最大限のIT活用に伴う業務運営の抜本的効率化や大胆な官民の役割分担の見直しによる行政業務そのものの改廃など、構造的、本源的な見直しを伴う機構・定員管理とは到底言い難い。
その結果、多くの場合、既存業務に関わる古くからの定員枠の太宗を、いわば「根雪」の如く維持しつつ、毎年度の短期的な行政需要の変化に応じる定員管理に終始しがちであり、結果、様々な政府の非効率性、組織疲弊に伴う問題発生などの悪循環が続き、今日的課題に対する解決能力が不十分なままで来てしまっていると思われる。
こうした根深く重たい問題と決別し、国内外の諸問題に絶えず柔軟かつ確固たる対応ができる政府を確立するため、自民党行革本部は、政府に対して以下の手立てを早急に講じることを要請する。
1.全ての府省における「根雪」部分を含めた業務の抜本見直しの断行
– 内閣官房に「業務の抜本見直し」の推進チームを設け、これを司令塔に、「根雪」部分を含めた業務の抜本的見直し(既存業務の縮小・廃止、業務方法の効率化、新分野関連業務の導入など)を本格実施する。推進チームは、内閣官房長官の下、外部の中立的専門民間人をトップにおき、相当数の外部民間人材、各府省の改革人材を起用するほか、内閣人事局、内閣官房IT室、総務省行政管理局など関係部局が参画する。政府全体としての業務抜本見直しに関する骨太の共通ルールを約3か月以内に定めた上で、全府省において業務の抜本的見直しを実施する。共通ルールは、自民党行革本部での議論も経て策定する。
– その際、最新のシステムの導入、デジタル化等を推進し、BPRなども促進するため、「霞が関の生産性革命」実現への青写真を作成する。その際、政府調達の一元化等を担う「デジタル政府庁」を設置し、効率的なデジタル化を強力に推進する。
– 上記の内閣官房の推進チームの指揮のもとに、各府省において、全府省横断的に共通知見・認識を持つ外部専門民間人と、当該府省内の改革人材などを糾合し、しがらみに囚われない業務見直しの特別チームを、外部人材をトップに構築する。
– 当面1年間(共通ルール策定までの3か月を含め)を「集中取組期間」と位置付け、見直しを実行する。
2.見直し結果をルール化し、内閣人事局で新たな機構・定員管理体制を確立
– 上記業務見直しの徹底を前提として、機動的かつ果断な機構の見直し、定員の増減を行う。
– 新たな機構・定員管理のあり方とその見直し方法をルール化(例えば、5年に一度、抜本見直しをする、等)し、内閣人事局で管理体制を確立する。上記の業務見直し、デジタル化等の推進の目標設定、査定、必要に応じ有効な手法の共有などの支援を行う。
– 合せて各府省においても、業務の不断の見直し体制を構築する。
– いずれにおいても、外部専門人材の積極関与を得るとともに、自民党行革本部における検証プロセスも確立する。
3.業務見直しと人事評価の改善・強化
– 内閣人事局における幹部職員の人事評価においては、今後、業務見直しの成果を重要指標とするなど、人事評価における業務見直しの位置づけを明確化し、全府省に徹底する。
– 各府省においても、業務見直し(既存業務の廃止・縮小、デジタル化等業務方法の効率化など)が幹部職員の主要な職責であることを明確にする。業務見直しの成果を比較検証し、結果を人事評価の重要指標とする。
– 業務見直しの成果を検証するうえでも、正確な勤怠管理の実施は必須であり、まだ導入されていない府省では早急に勤怠管理システムを導入する。
4.厚生労働省における先行的な業務遂行体制の暫定的強化と業務見直しの徹底等
– 定員に比して過大な業務負担が生じていると思われる厚生労働省については、その超過負担の解消を直ちに行うため、暫定的に定員を増やし、官民から有為な人材を求める。
‐同時に、厚労省においては、内閣官房の推進チームの指揮のもと、他府省に先行して省内外、官民の有為な専門人材を得て業務見直しチームを立ち上げ、外部専門人材のリーダーシップの下で霞が関全体の模範となる業務見直しをリードする。
– 人生100年時代に臨み、今後全世代型社会保障、多様かつ柔軟な働き方の実現等に向け、当分の間、数多くの法案が国会において審議される蓋然性が極めて高い。その事を踏まえれば、ここは法案審議体制に関し、国家的見地からの大胆な決断が不可欠と思われる。
例えば、衆参両院において、十分な審議時間の確保と、政策本位の国会審議により熟議を尽くすため、厚生労働委員会に替え、厚生委員会、労働委員会をそれぞれ置き、いずれかの委員会においては副大臣答弁を中心に法案審議することが考えられる。
一方、副大臣答弁中心の法案審議が認められないならば、例えば、厚生労働省への特命担当大臣設置など、厚生労働省関係法案の審議の実効性を高めるための行政府における手立てが考えられ、その際にも衆参両院に厚生委員会、労働委員会を置く事とすべきであろう。
いずれにしても、法案審議体制の抜本整備について果敢な対応が必要である事は明らかであり、国会においては与野党を超え、政府にあっては省庁の壁を乗り越え、次世代への責任として、早急に議論を深め、結論を得て実行に移すべきと考える。
5.国会対応業務の見える化と効率化
– 各府省業務において大きな割合を占める国会対応業務について、議員からの質問通告の確定した時間を公表し、現実の業務状況を見える化する。
– テレワーク等の活用により不要な深夜の国会待機の解消を図るなど、国会対応業務の効率化を図る。
6.政策人材の育成
– 官民をまたぐ政策人材の育成を目的とし、大臣補佐官等の大臣スタッフを更に活用するとともに、米国の「ホワイトハウスフェロー」を参考に、民間の若手人材に政策立案経験の機会を提供するべき。
以上
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自民党青年局長代理、行政改革推進本部事務局長。 電波、通信、放送政策、海洋水産政策、社会システムのデータ、標準化に取り組んでいる。2007年上智大学理工学部卒業後、NTTドコモに入社。2012年の衆院選で自民党から立候補し、初当選。第3次、4次安倍改造内閣にて総務大臣政務官(情報通信、放送行政、郵政行政、マイナンバー制度担当)。公式サイト。LINE@では、イベントのおしらせや政策ニュースをお届けしています。登録はこちら。
編集部より:この記事は、衆議院議員、小林史明氏(自由民主党、広島7区)のオフィシャルブログ 2019年6月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は小林史明オフィシャルブログをご覧ください。