2019/6/18安全保障委員会 質疑要約(スタッフ編集)
今般のイージス・アショア配備をめぐる防衛省の度重なる失態は、不甲斐なく遺憾である。長島昭久自身はイージス・アショアの配備には賛成であるが、莫大な予算をつぎ込む防衛装備の調達には納税者の理解が求められる。そして最も重要な事は、国防の所要を満たしているかどうかという点にある。
北朝鮮問題がクローズアップされる中、イージス・アショアの配備が決まったが、経空脅威は北朝鮮の弾道ミサイルだけではない。巡航ミサイルや極超音速滑空弾などの多種多様な脅威にも対応できる最適なシステムを取得することが求められる。
昨年7月、防衛省は、日本のイージスアショアにLMSSR(Lockheed Martin Solid State Radar)を採用することを決定したが、LMSSRはまだ試作品に過ぎず、ズバリ言えば「構想」段階のものであり、これから設計、製造が行われるものである(参考資料参照)。
一方で、すでに米海軍が2024年までに実戦配備を決定し、現在量産体制に入っている最新鋭のレーダーであるSPY-6は不採用となった。SPY-6は、「ベースライン10」という最新のソフトウェアとの組み合わせで機能する最新鋭レーダーであるが、LMSSRは、「ベースライン10」より一世代前の「ベースライン9」というソフトウェアとの組み合わせだという。
デジタル・レーダー用に開発された最新ソフト「ベースライン10」は、アナログ・レーダー用の「ベースライン9」に比べデータ処理能力が飛躍的に向上しており、ブラウン管TVとプラズマTVほどの差があると言われいる。これらの事実を踏まえると、なぜ防衛省が(未だ構想段階に過ぎない)LMSSRと(旧式ソフトの)「ベースライン9」という組み合わせを選定したのか、はなはだ不可解であり、岩屋防衛大臣に答弁を求めた。
岩屋防衛大臣は、米政府からの提案を客観的に評価したところ、経費、性能などの観点からLMSSRと「ベースライン9」の組み合わせを採用したと答弁。
岩屋大臣の答弁は選定の結論のみを繰り返しただけで、LMSSRがSPY-6を抑えて選定された根拠を明らかにしなかった。そこで、長島は、米太平洋軍の副司令官を務めた専門家であるダニエル・リーフ米空軍退役中将が防衛省のLMSSR選定に驚いたとする記事を紹介。リーフ氏がジャパン・タイムズ紙に寄稿した記事「イージス・アショアをめぐる危険な日本の選択」を引用しつつ、
①LMSSRが能力不足であること
②他のイージス・システムとの統合運用を阻害すること
③開発の遅れ
④コストの増加が見込まれること
などの理由を挙げ、なぜ日米韓豪などとの防空・ミサイル防衛協力体制の中で、日本だけが孤立するような防衛省の選択を厳しく批判していることを指摘した。
防衛省がLMSSRを採用する一つの決め手であった「日本の企業が参画できる」というメリットについても、選定後にロッキード・マーティン社から一方的に参画を拒否されることとなった不可解な経緯を明らかにした。
一方、SPY-6はすでに運用能力が実証されたものであり、他のイージスシステムとの統合運用が可能であり、多様な経空脅威にも対処ができる。したがって、秋田での協議が白紙に戻った今こそ、いったん立ち止まり、イージス・アショアのシステム全体を選定し直すべきではないか、と岩屋大臣に迫った。
イージス・アショアの構成品選定における比較表
質疑の最後に、LMSSRで使用されているAESA(アクティブ電子走査式アンテナ=最先端技術)の調達方法について質した。調達のあり方によっては、今後コスト増の可能性があるからである。(後述)
これに対し防衛省から、LMSSRのレーダー本体は、DCS(企業からの直接購入)で調達するとされるが、AESA含むレーダーとシステムを繋ぐ機微な部分についてはFMS(対外有償軍事援助:米政府を通じての購入)での調達を行なうという答弁があった。
(以上のやり取りで、質疑は時間切れとなってしまったため、以下は補足説明。)
政府にそのような質問をした意図として、そもそも米国防総省の規則によってAESA技術はFMS以外では他国に供与できないことになっているため、LMSSRがAESA技術を採用してつくられている以上、防衛省が説明するようにDCSでロッキード・マーティン社から直接購入することはできないはずである。
その点、防衛省の答弁は非常にわかりにくいものだった(この点は、今国会の安保質疑は今回で最後になるため、質問主意書で引き続き追及することとする)。さらに、DCSでは、FMSと違い、米政府による維持管理・技術更新支援は得られない。そのため、運用開始後の維持管理におけるコストがすべて日本政府の負担となることが見込まれ、さらなるコスト増の可能性がある。
質疑後、長島は以下のようにツイートした。
今日の安保委での質疑は又しても時間切れだったが、莫大な国民の血税を使い導入を図るなら、向こう30-40年の我が国に対する多様な空からの脅威に対応できる最新鋭の装備を購入すべき。昨夏防衛省が選定した陸上イージスシステムは、どう考えても最適なものとは言えない。見直しの契機になれば本望。 pic.twitter.com/Zk7ftd043C
— 長島昭久 (@nagashima21) 2019年6月18日
立地が困難な陸上配備より、イージス艦を増強すればいいと考えがちですが、イージス艦1隻を常時洋上に展開するには(メンテナンスや訓練の必要から)更に2-3隻を保有せねばならず、それぞれ乗組員200-300人必要です。陸上イージスは20人弱で稼働させることができますので、省人化の観点からも有効。
— 長島昭久 (@nagashima21) 2019年6月19日
長島 昭久 衆議院議員(東京21区)、地域政党「未来日本」代表
1962年生まれ、寅年。慶應義塾大学で修士号(憲法学)、米ジョンズ・ホプキンス大学SAISで修士号(国際関係論)取得。2003年に衆院選初当選、民主党政権では、防衛政務官、防衛副大臣を歴任。2016年から文部科学委員会筆頭理事、外務委員会委員。17年、民進党を離党し、希望の党を経て無所属。18年6月、地域政党「未来日本」を旗揚げ。公式サイト。ツイッター「@nagashima21」
編集部より:この記事は、地域政党「未来日本」代表、衆議院議員の長島昭久氏(東京21区)のオフィシャルブログ 2019年6月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は長島昭久 WeBLOG『翔ぶが如く』をご覧ください。