厚生労働省の建設業支援事業は未来を見据えるべき

6月16日は行政事業レビュー公開プロセス・厚生労働省の後半戦。4つの事業について議論した。

中小企業は労働者不足に苦しんでいる。そこで、実務経験の乏しい若者等を訓練する事業を厚生労働省が実施している。中小企業が専門的な知識・技能を有する支援団体と共同して訓練実施計画を作成し、Off the Job TrainingとOn the Job Trainingを組み合わせた雇用型訓練を行うのが「中小企業等担い手育成支援事業」である。建設業・造船業などが対象となっている。

調べると同様の事業が多数存在する。公開プロセス本番前に質問したところ、建設業を対象として、厚生労働省には「中小企業等担い手育成支援事業」「人材開発支援助成金(旧建設労働者確保育成助成金)」「建設分野におけるハロートレーニング(職業訓練)の実施」「ものづくりマイスター制度による若年技能者への実技指導」があり、国土交通省には「多能工化推進事業」が、内閣府には「地方創生加速化交付金事業」があるとの回答がきた。

内閣府事業は少し性格が違うが、他は似たり寄ったり。省内や府省横断的に重複していないか検討しなかったのだろうか。また、他の多様な産業も労働者不足に悩んでいるというのに、なぜ建設業や造船業に手厚い支援が必要なのだろうか。

事業の究極的な目的は生産性の向上だそうだ。若者がスキルを身に着けると生産性が上がるというわけだ。

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しかし、待ってほしい。自動車工場にロボットが全面的に導入されて生産性が向上したように、これからの時代はロボットやAIで生産性を上げるのが本筋である。生産年齢人口は2015年の7728万人が65年には4529万人まで減少する。ロボットやAIの導入は必然である。

建設業や製造業で働く人の仕事も、自分で動くのではなく、ロボットやAIに命令し動かす仕事に移っていく。長期的なトレンドを考えれば、若者に与えるべきスキルも、溶接技術等ではなく、ICTを理解し操る力であるべきだ。

若者に職業訓練するときには、その仕事が長く続くか考える必要がある。目先の労働力扱いでは気の毒だ。公開プロセスの結論は事業全体の抜本的な見直しとなった。