受動喫煙禁止もよいが喫煙者を減らすのが正道

6月16日は行政事業レビュー公開プロセス・厚生労働省の後半戦。4つの事業について議論した。

「健康的な生活習慣づくり重点化事業」は、たばこ対策(禁煙)促進、受動喫煙対策促進、糖尿病予防戦略推進、地域の健康増進活動支援を組み合わせた事業である。他の病気や生活習慣が多数ある中で、なぜ、たばこと糖尿病を重点化の対象に設定したのだろう。過去の経緯から引き続いて実施されているのだが、優先度が高い理由は明確ではない。

写真AC

以前の記事にも書いたように、WHOは実施すべき主要政策をMPOWERとして整理している。

わが国に対するWHOの評価は、M(たばこ使用と政策のモニタリング)は優、P(受動喫煙禁止のための法規制)は不可、O(禁煙支援・治療)は良、W(たばこの危険性の警告表示)は可、マスメディア・キャンペーンは不可、E(たばこの広告・販促・後援の禁止)は不可、R(たばこ税の引き上げ)は良である。

Pについて改正健康増進法が7月に施行される。これでWHOの評価も上がるだろう。「健康的な生活習慣づくり重点化事業」で受動喫煙対策促進を取り上げているのも、改正法への対応を促すためだ。

それでは、マスメディア・キャンペーンやたばこ広告・販促・後援の禁止を強化しないのはなぜだろうか。これらWやEについて厚生労働省は主管の財務省に働きかけていると回答したが、財務省側の動きは鈍い。

受動喫煙対策といっても、手を上げた自治体における講習会やパンフレット等の配布、ホームページ広報等の一般的な手法である。短期間で効果を発揮させる施策とはいえないのではないか。

糖尿病について予防活動に37百万円が予算配分されている。また、他事業として、重症化予防を目的とする糖尿病性腎症の患者等への生活指導(5億6百万円)が紹介された。この予算のバランスが理解できない。重症化防止よりも糖尿病になる前の予備群を抽出して生活指導するほうが医療費節減効果は出るはずだ。

なぜ、たばこと糖尿病なのかわからない。なぜ、たばこ広告の禁止に動かないのかわからない。なぜ、ありふれたパンフレットの配布なのかわからない。なぜ、予防に力を入れないかわからない。

問題は共通している。予算が限られた中で、エビデンスに基づいてもっとも有効な施策を選択するロジックが整理されていないのだ。公開プロセスの結論は事業全体の抜本的な見直しとなった。