今週のメルマガ前半部の紹介です。各種調査によると、2019年の参院選東京選挙区ではやばやと山本太郎に当確サインが出ているようです。寄付金も1億6千万円ほど集まっており、3億円突破は時間の問題だろうとのこと。
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組織票のない議員一人の政治団体でこれはちょっとした社会的現象と言っていいでしょう。いったい氏の何が評価されているのか。そして、そもそも誰が氏を必要としているのか。いい機会なのでまとめておきましょう。
山本太郎が流行るわけ
その前に、ちょっとだけ日本の社会情勢のおさらいをしてみたいと思います。今から10年ほど前に筆者自身も参加するワカモノマニフェスト作成委員会の有志で「仮に、現在の社会保障制度を今後も維持し続けるとして、そのために消費税はいくら必要か」を試算したところ、30%という数字が出ました。その前後に複数の研究者やシンクタンクも似たような数字を出しているので、今でも割と正確な数字だと考えています。
この数字は震災前のものであり、当時はまだ子供手当もなかったため、現在の数字はもっと厳しいものになっているはず。また引き上げを1年遅らせるだけで必要な消費税が0.8%上がるという試算もあります。現在は「少なくとも30%」くらいの認識が必要でしょう。
「いい加減にしろ!そんな払えるわけないだろ!」という声が聞こえてきそうですが、筆者もそんなに払えるとは思えません。なので、実際にはこんな感じで社会保障カットが順次行われるはずです。
【参考リンク】参院選後に「年金受給68歳引き上げ」本格議論へ 生活費不足分は3000万円に
高齢者が今もらっている年金を取り上げると暴動が起きそうですけど、何十年か先に1千万円減らすからねと言われても実感ないから現役世代はデモ一つ起こさないわけです。ほんと、上手いとこついてくるなと感心します。
上記のように年金支給開始68歳引き上げで団塊ジュニアは老後2千万円の年金不足に追加でさらに1千万円ほど不足が積み上がり、マクロ経済スライドでさらに2千万円ほど減るので年金だけでトータル5千万円不足する状況になるわけです。年金だけでこれだけ目減りするわけですから、医療や介護も含めると頭がくらくらしてきます。
余談ですが、高齢者の社会保障を少しくらいカットしろ、なんていうと「高齢者に死ねというのか!」なんて脊髄反射してくるバカが結構多いんですけど、彼らの言うところの「高齢者の取り分をちょっとでも削ると死ぬ理論」に従うなら年金だけで今より数千万円削られている団塊ジュニア以降の世代は絶滅確定ですね(苦笑)
まあそんな具合に、消費税引き上げと社会保障カットを組み合わせて「消費税30%分の負担」をこれから日本社会はしていくことはもはや確定事項なわけです。恐らく最後は消費税20%前後で社会保険料がもう少し上がって、不足分は給付カットという感じではないでしょうか。
あ、それとたまに「実質賃金が下がって生活が苦しくなったから安倍政権は悪政だ」みたいなことをおっしゃる方がいますが、アホですね。民主党政権は(実質的なサラリーマン税である)社会保険料と消費税の引き上げで対処しましたが、安倍政権はそこに物価上昇によるインフレ税をミックスさせただけの話です。
【参考リンク】2018年度の一般会計税収60.4兆円、バブル期超え最高に
物価上昇による税収増がなければ別の形で国民が負担していただけです。はっきりいって立民だろうが共産党だろうがどこが政権とってもこの流れは変わりません。国民の負担は年々上がり続けます。アンチビジネスで雇用流出させてないだけ安倍政権の方がよっぽどマシでしょう。
処方箋ですか?それはただ一つ、自分で稼ぐことです。高い成果を上げ続けて同僚の2倍のボーナスをもらい続ける。今いる会社がそういう人事制度のない年功序列企業なら、完全実力主義の会社に転職する。そうやって国に取られる以上に稼ぎ出せる人だけが、従来以上の暮らしを享受できるでしょう。
でも、みんながそうできるわけではありません。むしろそうやってがんがん稼げる人は少数派でしょう。出来ない人にとっては、状況はけっこうしんどいと思います。年々負担だけが増え続ける一方で、自分には一切メリットはないからです。
増え続ける負担は現行の社会保障を回す燃料として消費されるだけ。挙句に将来自分が受け取る社会保障は今よりずっと低いわけですから。絶望的な状況と言ってもいいでしょう。
そんな状況で、こんな声が聞こえてきたらどうなるか。
「自国通貨建ての国債はいくら刷っても大丈夫。消費税は引き上げじゃなくて引き下げか廃止!どんどん借金してみんな豊かに!」
たとえそんなこと言ってるのが昔パンツ一丁でメロリンキューと叫んでいた男だとしても、マトモな経済学者は全員反対してるとしても、人間というものはそこにわずかでも希望があるならすがりつく生き物です。「見たいものしか見えない人」というのは、他に希望のない可哀想な人でもあるのです。これが山本太郎旋風の正体でしょう。
実は、10年以上前から似たようなバラマキ主義者は普通に存在していました。「政府の借金は国民の資産」という珍フレーズや(政府にくわえて企業、個人まで全部ぶちこんだ謎の)“日本国のバランスシート”なるものを作ってバラ色の未来をアピールする面々です。
でも、彼らはいずれもネットの一部の界隈で影響力を持つだけであり、実社会では少数の情報弱者に本を売りつけて小銭を巻き上げるだけの存在でした。
むろん、山本本人の努力や能力も影響力に関係あるでしょう。とりわけ役者としての地力は街頭演説でフルに発揮されているように見えます。でも、やはり社会全体に蔓延しはじめた閉塞感こそ、彼を押し上げている原動力だと筆者は考えています。
最近、山本太郎を初期のヒトラーに似ているという人をちらほら見かけます。演説が上手く、大衆受けするバラマキ政策をひっさげてすい星のごとく現れた点などがそう見えるようです。
ただ、筆者はどちらかというと、戦間期のドイツと現在の日本社会の方に共通点を多く感じています。第一次大戦後のドイツは天文学的な賠償金の負担に苦しみ、多くの人々が希望を失った状態でした。いくら負担しても負担しても、それは外国への支払いに充てられ、自分の生活はまったく向上しないわけです。
年々重くなる負担に苦しみつつも、それは上の世代の給付に消費され恩恵の感じられない日本の状況と通じるものがありますね。
以降、
政策をよく見るとわかる太郎のポジション
山本太郎は内閣総理大臣の夢を見るか
Q:「小さな企業で職務給化は可能でしょうか?」
→A:「とりあえず管理職のマネジメントを見直すだけでも効果大です」
Q:「障がい者もリストラ対象に?」
→A:「法定雇用率が決められているので普通はないでしょう」
Q:「仕事に対するモチベーションを保つには?」
→A:「プロになることです」
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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2019年6月27日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。