子育て政策や少子化対策というと、保育所の話に目が行きがちですが、「子どもを持ちたい」と思っている女性の視点に立って、彼女たちを助ける政策も必要だと思います。
6月下旬、厚生労働省が、不妊治療と仕事の両立で苦慮している女性を支援するため、勤務先の企業に配布する「マニュアル」づくりに乗り出したとの報道がありました。
東京新聞:不妊治療と仕事両立支援 厚労省、企業向け手引策定へ:政治(TOKYO Web)
報道があった時期は、すでに事実上の選挙戦に突入しており、まだ詳細を把握しきれていない部分もありますが、この記事でも紹介されている昨年3月発表の厚労省調査では、不妊治療の経験者のうち、治療と仕事の両立ができずに仕事を辞めた方は16%。両立している人の中でも、87%が「難しい」と答え、通院回数の多さや精神面の負担、通院日に外せない仕事が入ったことなどを理由に挙げています。
実は、私自身も役所づとめの頃に、不妊治療で苦労しました。痛いし、お金はかかるし、本当に大変です。東京から北九州の有名な病院に夫と一緒に通っていたのですが、治療費以外にも交通費、宿泊費もかかり、苦労して病院に行くと主治医の先生から「まだ卵子が育ってませんね。もうちょっと経ってから来てください」なんて言われたり…。
「そんな殺生な〜」と泣きついたら、先生もなんとか治療を続けてくださったのですが、結局ダメだったんですね。
不妊治療はタイミングがものすごく大事。最近は不妊治療のために有給の休暇制度をもうける企業も出てきましたけど、当時は働きながら不妊治療をするのは絶対無理だと思いました。
よく「社会で子どもを育てる」と言いますが、女性が「子どもが欲しい」と思い立った段階から社会で支えなければ、不妊治療は成功しづらいのではないでしょうか。ところが厚労省の調査では、そもそも従業員が不妊治療をしているかどうかすら把握していないという企業が7割にものぼったそうで(!)、当事者と社会の認識のギャップの大きさを感じます。
もし不妊治療の確率が上がったら、そして費用も少なくて済んだら、少子化に少しでも歯止めをかけられるのではないでしょうか。女性が働きやすい社会へ、子どもを産み、育てながら仕事と両立できる社会へ、まだまだやりたいことがたくさんあります。
引き続き、お力添えを賜りますよう、よろしくお願いします。
太田 房江(おおた ふさえ)参議院議員、元大阪府知事
1975年通産省(現・経済産業省)入省。2000年大阪府知事選で初当選し、日本初の女性知事に。2008年に知事退任後、民間企業勤務を経て、2013年参院選で初当選。厚生労働政務官などを歴任。公式サイト、ツイッター「@fusaeoota」、LINE@