日本経済新聞が「派遣時給、3年で3割上げ:厚労省指針 正社員と格差縮小」と伝えている。勤務年数や能力に応じた賃金を支払うよう人材派遣会社に義務づけ、同じ業務で3年の経験を積んで業務内容が変われば、初年度より賃金を3割上げるなど、具体的な指針を厚生労働省がまとめたそうだ。
厚生労働省は「労働者派遣事業関係業務取扱要領」をサイトで公表した。そこには、「職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項」を踏まえて①賃金水準の見直し、②昇給・昇格制度や成績等の考課制度の整備、③職務手当、役職手当、成果手当の支給等を行うべきとの記述がある。日本経済新聞の報道は、これに基づくものだ。
これは派遣労働者にとって朗報だろうか。
過去には、労働関係に政府が介入して失敗した例がある。民主党政権が推進した、5年を超えて有期雇用の更新を続けると労働者は無期雇用を求められるという「労働契約法」は、多くの雇い止めを生み出した。雇用の継続は将来の人件費増につながるため、企業はリスクを回避しようとしたわけだ。
韓国の文政権が最低賃金の引き上げを進めた結果、失業率が上昇したという事例もある。経営体力の弱い事業者は人件費の負担増に耐えられず、雇用を減らす方向に動くからだ。
日本経済新聞は記事の中で「企業がコスト増を敬遠して派遣社員の活用に慎重になれば、派遣社員の雇用機会が減っていく恐れもある。」と指摘しているが、それが現実化するかもしれない。
賃金引き上げは耳にはやさしく響くが、慎重に進めないと失敗する。参議院選挙の投票に行く前に公約をもう一度チェックするようにお勧めする。