「地震危険度」都内ワースト3位…中野が“住み続けられるまち”になるために

中野区の憲法にあたる中野区基本構想の改定が迫っており、まちづくりへの大きな方針がその改定に盛り込まねば、中野区が破綻してしまうという危機感から、その想いを議会で訴えさせていただきました。

その内容においては都市部の自治体で共通点もあろうと思い、以下に取りまとめました。

都庁から望む中野区市街(Wikipediaより:編集部)

この国の建物、インフラは老朽化し、スラム化が止まらない

地震大国であり、風水害などの危機に晒されているこの国にあって、構造物の建て替え、除去は必要不可欠です。

私はこの建て替え、除去の際に生じる感情が論争の火種になることがあるため「ノスタルジーの成仏」という考え方を提唱し、まちの更新を推奨します。

国土交通省住宅局マンションに関する統計・データ等によるとマンションの建て替えの実施状況(実施準備中含め)がなされた事例は全国でたった277件だけです。全国の全棟数に関するデータはありませんが、建て替えが非常に困難であることが、うかがい知れます。

図1:マンション建替えの実施状況(平成31年4月1日現在)

そして、建て替えの要因である老朽化は非常に顕著になりました。

現在のマンションストック総数(平成30年末時点)は約654.7万戸であり、築後30、40、50年超の分譲マンション戸数(平成30年末現在)によると築40年以上が現在81.4万戸(12.4%)で、10年後には約2.4倍の197.8万戸(30.2%)、20年後には約4.5倍の366.8万戸(56.0%)となる見込みで、将来において、老朽化がさらに社会問題になると考えられます。

図2:築後30、40、50年超の分譲マンション戸数

しかし権利者のライフステージが疎らで、今すぐ建替えたい世帯、終の住処としたい世帯との乖離があります。

権利者の本人確認、権利確定などが難航、マンション建て替えの積立金が貯まっていないなどの理由で建て替えができない現状があります。

一戸建てにおいても同様のケースもあるでしょう。

2018年、東京都は『地域危険度一覧表』で町丁目別の5段階評価を行いました。

Business Journalの記事で、総合危険度ランク4以上とされた面積は、23区平均11.3%、千代田区、中央区、港区は0%で、中野区においては27.6%で23区ワースト3位となり、災害に対する脆弱性が示されました。

図3:震災危険度ランク4以上の地区面積の割合

この絶望的な状況はまちづくりのあり方を変革しなければ、変わりません。

まちづくり推進のためソフト(人)とハード(まち)の双方が同じ方向を向かう必要があります。

同じ方向を向かずに失敗した事例を挙げます。

まちづくりが進んだが故に、ある観光名所から人々がいなくなり、賑わいをつくるため、有志が巨額を費やしましたが成果を挙げられませんでした。

何故かといえば、そのまちづくりの大きな一つとして、地下街建設がありました。

ほとんどの人が雨も降らない、気温が安定した地下街を利用し、地上部にある観光名所から人はいなくなりました。

ソフト(人)がいくら頑張ってもどうにもならない事例です。

人集い、活動ができる環境を生み出すまちづくりをソフト・ハードの両輪で創造する必要があります。

しかし、中野区はハードとして大きな欠陥があります。

多くの若者が都心へのアクセス性から中野へ転入しますが、シングル用の住居が多く、結婚、出産を機に転出する人が多くおります。

「中野に住み続けたかった」と中野を愛する人が転出していきます。

中野は“住みたいまち”、“住み続けたいまち”、まで前進しましたが、“住み続けられるまち”になれていません。

“住み続けられるまち”へとステップアップする必要があります。

そのためにも中野のまちづくりのルールのパラダイムシフトを起こさねばなりません。

中野は向こう10年以内に中野駅周辺再開発、西武線連続立体交差事業を皮切りに生まれ変わる機運を活用し、ドラスティックな都市計画を推進し、セットバックによる道路幅員の拡大、容積率増加による建て替え促進をすべきです。

先の台風15号で最大93万件が停電し、さらに無電柱化が注目されますが、最低でも5.45m道路幅員が必要であり、現在の中野区においては道路が狭く、ほとんど不可能です。

空き家は現状で利用希望者は少なく、公共施設として既存不適格、リノベーション、建て替えなどが求められますが、所有者は結局、そこまでのモチベーションが上がりません。

東日本大震災を起因として表面化された土地所有者不明問題を解決しようと所有者が特定できない場合においても対処できるように法改正が進み、遠くない将来、マンション建て替え問題にも活用できる法律になると推察します。

中野ブロードウェイでは一つのテナントにおいて複数に権利が分かれ、複雑化したところにおいても解決の糸口が見えてくるはずです。

まちづくりのモチベーションをあげるため、容積率を変える用途地域変更のインセンティブが必要です。

さらに、まちづくりを促すためにも、区の持つリソースを最大限に生かすことも検討すべきです。

学校施設、公園、区営住宅は更新時期となっており、学校と公園のコラボ、区営住宅と小中学校の更新に合わせた相互の移転建て替え、公園をまちづくり推進における民間の建て替えのための代替地にするなど、役所は担当部署がもつ管理物件だけで考えるのではなく、全庁的に50・100年スケールで区のリソースでまちづくりに取り組めば、様々な可能性が生まれてきます。

公園・防災機能を持つスペースを有した集合住宅などができれば、民間所有のために税金は使いません。

コンプライアンスは当たり前ですが、役所の論理・縦割りを外して、俯瞰にみれば、明るい未来が見得てきます。

加藤 拓磨   中野区議会議員 公式サイト