最新版の『現代用語の基礎知識』が発売された。今年も「働き方事情」のページを担当させて頂いており。大変光栄だ。感謝。
創刊から72号目。今年から「新創刊」で。大リニューアル、大変革。ボリュームのある辞書的な1冊から、コンパクトに1年を記録し、1年で読み切ることができ、今年がどんな年だったのかを言葉をとおして振り返ることができるものに。
リニューアルする件は、執筆者には手紙で伝えられ。ちょうど版元である自由国民社で新作を準備していた頃であり、よくお邪魔していたので、編集長、担当編集者から直接、聞く機会もあり。
実際、こんなに薄くなったわけだけど、個人的にはリニューアルは評価するし、今の時代に合っていると捉えている。お値段も半額以下になったし。手に取りやすく、読みやすくなった。新しい書き手も参加しており(友人・知人率高め)、構成もいい感じ。紙媒体の可能性を感じる1冊になっている。
発売に合わせて、今年の「ユーキャン新語・流行語大賞」の候補語も発表された。
毎年、セレクションが賛否を呼ぶこの賞だが…。
流行語大賞の「メディア陰謀説」は本当か(東洋経済オンライン)
2014年に東洋経済オンラインにて、当時の編集長であり、同賞の選考委員でもあった清水均氏にインタビューをしているので、こちらをご覧頂きたい。
確認しておきたいのは・・・。
・その年の『現代用語の基礎知識』に掲載されている新語・流行語の中から選ばれる。ゆえに、校了後に流行った言葉は選ばれないし(今年の場合「身の丈」など)、逆に「いまさら、それ?」という言葉が選ばれたりもする。
・あくまで選考委員会が選んだものである。その言葉のメディアへの掲載数、ツイート数、関連記事のPV数、観客動員数や書籍の販売数などを反映したものではない。
・選ばれる語を選考委員会は礼賛しているわけではない。政権批判の言葉などが選ばれることもある。数年前に「プレミアムフライデー」が受賞した際には、経団連副会長が受賞式に現れたが、明らかに褒め殺し色が強かった。
・賞金は、ない。
・大賞が数語出る年もある。
・トップテンには序列はない。
・誰に受賞してもらうか、悩むことは正直ある。受賞者が辞退することや、受賞式に来れないこともある。さらには、受賞者が明かされないことも。たとえば、「新人類」については仕掛け人だと言われる筑紫哲也は受賞せず、当時活躍していた西武ライオンズの若手、工藤、渡辺、清原が受賞したことも。
さて。
毎年、違和感を抱きつつも、「たしかにね」と言えなくもない、この賞だが。個人的には、今年は無力感でいっぱいである。というのも、毎年、私が担当するページ「働き方事情」からはノミネート語があったからだ。それこそ、「プレミアムフライデー」に関しては、1年以上に渡り、各種メディアで批判的な論を展開し。トップテン入りしたときは感無量だった。
受賞者は私ではなかったけれども。その後、このキャンペーンの仕掛け人だった元経産官僚とは和解し、一緒にプレミアムフライデーを楽しむという、壮大なる手打ちまでしたのだけど(大企業の社員は19時~20時にやっと集合というオチだった)。
自分が担当したページから「リクナビ内定辞退率予測問題」「ギグ・エコノミー」などは入るのではないかと思っていたのだが。「私、定時に帰ります」なども。他、働き方改革関連法案の施行、フリーランスの拡大や高齢者の雇用、外国人労働者の拡大、コンビニ問題、佐野SAのストライキ、タニタのフリーランス問題など、論争をよぶ案件は多数あったのだが。私が関係した、コメントしたかどうかは別として、広い意味で働き方に関する言葉が少なめだったのが残念だった。
また、今年、論争を呼んだ「あいちトリエンナーレ」や「表現の不自由展・その後」も選ばれなかった。今度、これに関する本に、座談会記事が載るのだが。
まあ、とはいえ、スポーツネタ、ヒット商品など、明るい話題も反映したものにはなっていたのだが。
物書きとしては、いつか新語・流行語大賞をと思い、日々生きている。まあ、少なくとも担当ページからノミネートされたらいいなと思っていたのだが。今年は猛スランプだったと再認識。来年は頑張りますかね。
『現代用語の基礎知識』の版元、自由国民社から出た新作をよろしくね。
編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2019年11月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。