今年も、年末商戦が近づいています。全米小売業協会(NRF)によれば、今年は前年比3.8~4.2%増、金額ベースでは7,279億~7,307億ドル(自動車、ガソリンを除く)となる見通し。2018年は対中追加関税に加え米株安、政府機関の閉鎖などが影響し2.1%増と小幅な伸びにとどまりました。
しかし今年は、米中貿易協議に改善の進展がみられ、労働市場が力強さを維持し所得が拡大中です。年末商戦の開幕を告げる感謝祭は今年11月28日と前年より1週間遅く、クリスマスまでの2018年と比較し商戦期間は6日少ないながら、過去5年平均の3.7%増を上回る期待が高まります。
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(作成:My Big Apple NY)
オンライン小売売上高は、前年比11~14%増の1,626億~1,669億ドルとなる見通し。少なくとも年末商戦全体の22.3%を占め2018年の20.7%からさらに拡大するなんて、小売業がオンラインでの売上に注力する動きと整合的ですね。
その小売業界と言えば、オンライン業者との競争や消費者の嗜好の変化を受けて景気拡大中ながら未曽有の閉店ラッシュにあります。英語でいう“retail apocalypse=小売の終末”と呼ばれ、10月末までに8,600超の店舗が閉鎖を余儀なくされました。
例えば、2月に破産申請を行なった靴小売大手ペイレス・シューソースは全2,500店舗の閉鎖を決定し、閉店数としては過去最大の記録を塗り替えました。その他、11月8日に最高経営責任者(CEO)が辞任を発表した服飾大手ギャップが230店、破産申請した百貨店シアーズも124店、百貨店Kマートも115店をクローズ。
その他、女性モデルなどへの不適切な行為が問題となったレスリー・ウェクスナーCEO兼会長が率いるLブランズ傘下のビクトリアズ・シークレットも53店を閉鎖し、今年は恒例の下着ファッション・ショーも中止したものです。
マンハッタンも、店舗閉鎖の波に呑まれています。2019年に入り閉店の動きが加速、5thアベニューの有名百貨店ヘンリ・ベンデルは123年の歴史に幕を閉じ、ロード・アンド・テイラーは37丁目の旗艦店をコワーキング・スペースのウィーワークに売却。その他、カルバン・クライン、トミー・ヒルフィガー、ギャップなど米国を代表する数々のブランドの旗艦店が5thアベニューから撤退しました。
ヘンリ・ベンデル、90年前半の赤文字系女子は縦ストライプのバニティ・バッグをお持ちだったはず。
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(出所:Henri Bendel)
在りし日のヘンリ・ベンデル、別格な存在感は今も語り草に。
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(出所:Roger Gerbig/Flickr)
ロード・アンド・テイラー、輝かしき時代はクリスマス・デコレーションも鮮やかに。
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(出所:Dave Johnson/Flickr)
とはいえ、暗い話ばかりではありません。マンハッタンに2019年3月に誕生したハドソン・ヤードは、NYを代表する新名所として繁栄への扉を開けました。
一体どんなところかと申しますと…それは、次回にご説明しましょう。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年11月25日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。