先日、アゴラでもおなじみの尾藤克之氏がJB Pressに寄せられた「サンプラザが死んだ!公約は破棄され選挙前の状態」の記事を拝読し、若干ながら、ニュアンスが異なる点がありましたので、寄稿させていただきます。
上記記事は2018年6月の中野区長選挙の争点となっていた中野サンプラザの再整備方針について記されたものです。
記事には次のようにあります(カッコは筆者注)。
(2019年)3月25日、区長から諮問された都市計画審議会で、サンプラザを解体しその敷地内に道路を横断させるという都市計画変更案が全会一致で了承され、同28日にその答申を受けて区が計画決定しました。これで事実上サンプラザ解体も決定したことになります。
私は当時、都市計画審議会委員の一人で、中野区生まれ育ちの私が自ら中野サンプラザの解体の最終的な決定にかかわり、何ともいえない感覚を覚えたことは間違いありません。
しかしサンプラザと中野駅を巻き込んだ巨大プロジェクトがこの日の決定だけで進むものではなく、長い年月をかけた計画の上に成り立つものです。
あくまで都市計画決定は過程にすぎません。
国土交通省、東京都、JR東日本等との様々な協議の上、計画がなされているわけで、首長がすべての関係者を敵にする覚悟がなければ、性急に止めることはできません。
大まかなではありますが、サンプラザに関わる都市計画変更の流れを示します。
左図が旧計画、右図が現計画です。
旧計画は平成26(2014)年4月28日都市計画審議会で初めて素案が報告され、平成27年(2015)年1月19日都市計画審議会に諮問され、都市計画決定されました。
現計画は平成29年(2017)10月23日都市計画審議会で計画素案が初めて報告され、平成31年(2019)3月25日都市計画審議会に諮問され、都市計画決定されました。
旧計画ではサンプラザの敷地に線が引かれていないため、都市計画決定によるサンプラザの再整備の影響はありませんでした。しかし現計画ではサンプラザの敷地上に赤い線が引かれており、都市計画決定は両建物を巻き込んだ再開発になることを意味します。
基本的に都市計画審議会で素案が出された時点で関係各所との根回しは終わっており、審議会委員はその案の是非を問われるというよりは問題なく進められる計画なのかチェックする機能でしかありません。
つまり計画の素案が出された時点で概ねその方向で進んでいくものであります。
何がいいたいかというと現計画の素案が出されたのは2017年10月都市計画審議会で、中野区長選挙は2018年6月であり、実質、中野サンプラザの解体を決定づける都市計画変更の中止には時期を逸していたということになります。
要するに中野区長選挙のときには、サンプラザの解体を止めることはできないフェーズになっていたということです。
現に平成30年度(2018年度)第5回中野区都市計画審議会会議録にありますが、私、加藤の「昨年の 6 月の選挙の前と、その酒井区長にかわった後というところで大きくこの都市計画の概要というのは変わったところがありますでしょうか。」との問いに対し、区は
都市計画の内容としましては、基本的な考え方は昨年の素案の段階から原案、案という形で来ておりまして、そこのところで変わってきてはおりません。ただ、区長選の前後で中野サンプラザのあり方については少し立ちどまって考えるということはございましたので、そこを踏まえて、スケジュール的に若干見直したところはございます。
と答えています。
区民の方々には非常にわかりづらいかもしれませんが、特にまちづくりに関することに関しては数年、数十年と時間を要する事業で一朝一夕にできませんので、政策のスケジュール感を理解していただけると幸いであります。
加藤 拓磨 中野区議会議員
1979年東京都中野区生まれ。中央大学大学院理工学研究科 土木工学専攻、博士(工学)取得。国土交通省 国土技術政策総合研究所 河川研究部 研究官、一般財団法人国土技術研究センターで気候変動、ゲリラ豪雨、防災・減災の研究に従事。2015年中野区議選で初当選(現在2期目)。公式サイト