美味しいお寿司屋さんは、なぜ予約が取れないのか?

内藤 忍

東京の紀尾井町にある寿司店に出かけてきました。

予約が取りにくいお店なので、お邪魔した時に、次の予約を取るというようにして、年に数回通っています。

しかし、来年の夜の予約は、既に2020年12月末まで全て埋まっているそうです。私と同じように予約を取る人がきっと競って日程を押さえているからだと思います。

クオリティーの高い寿司店は、このように予約が取れないお店が多いのですが、これには理由があります

お寿司のネタの原価は極めて高くなっています。通常の飲食店は、せいぜい原価率30%程度ですが、お寿司の場合は50%を超えることも珍しくありません。

価格を抑えながら、良質な素材を使うためには、廃棄ロスを抑えなければなりません。事前に予約で何人来るかがわかっていれば、無駄な仕入れをする必要が無く原価を下げることができます。

お客様がいつ何人来るかわからない不安定な状態で、高いネタを仕入れると売れ残りリスクがあります。もし材料が余ってしまい、品質が低下したものを翌日出せば、お店の評判はたちまち落ちてしまいます。

だから、稼働率をほぼ100%にすることで、高い原価率を贅沢に材料を使っても、利益が出るようにしなければならないのです。

acworks/写真AC(編集部)

また、人気店の中には「一見さんお断り」と言うところもありますが、これにも理由があります。

紹介で来た人や常連の方がキャンセル率が低く、当日キャンセルのようなリスクが低いのです。お店としてはクオリティー維持のために仕方ない側面があるのです。

旅行者や観光客のように、リピートする可能性が低いお客様の中には、当日ギリギリに平気でキャンセルする人がいます。ひどい場合は連絡さえしてこないで、そのままという人もいるのです。常連客なら、キャンセルすれば次からは予約を入れてもらえなくなりますから、なんとしてもお店にやってきてくれます。

予約が取れない東京のお寿司屋さんは、バブルだと言う人もいます。確かに1年以上前から予約して1回の食事に40,000円から50,000円払うのは異常かもしれません。

しかし、それだけのコストを払う人がきちんと来店してくれるからこそ、お店は思い切って最高の素材を仕入れ、無駄なく使うことによって顧客満足度を高め、稼働率を高め、経営を成り立たせているのです。

だから、寿司職人からすれば、毎回が真剣勝負です。今回も菅谷さんの素晴らしいお寿司と、ワインのマリアージュを堪能することができました。

残念なのは、来年の夜の予約が取れなかったこと。半年後のランチタイムに予約を入れて帰りました。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2019年12月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。