“エリマネ”って何?中野サンプラザ再開発後の中野

あけましておめでとうございます。

さて、旧年中から書いてきた中野駅前の再開発に関連して街づくりのあり方についても触れてみます。

人口減少が進む日本において、不動産価値は大きなトレンドとして、低下していくことが想定され、すなわち、まちの価値を下げていきます。

不動産価値は交通の利便性、周辺施設の充実、治安などがありますが、近年の研究では「賑わい」が重要であると考えられております。

賑わいの創出をすることで、まちの価値を高めるために「エリアマネジメント」を行っていく必要があります。

2019年3月に内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局と内閣府地方創生推進事務局は、地域再生エリアマネジメント負担金制度ガイドラインを策定しました。

地域再生エリアマネジメント負担金制度とは、3分の2以上の事業者の同意を要件として、市町村が、エリアマネジメント団体が実施する地域再生に資するエリアマネジメント活動に要する費用を、その受益の限度において活動区域内の受益者(事業者)から徴収し、これをエリアマネジメント団体に交付する官民連携の制度です。

自治体とエリアマネジメント団体がしっかりと中長期的なプランをもって実行していく必要があります。

そのためにはその地域の歴史、文化などの特性を理解していく必要があります。

エリアマネジメントとは、特定のエリアを単位に、民間が主体となって、まちづくりや地域経営(マネジメント)を積極的に行おうという取組みです。現在、民主導のまちづくり、官民協働型のまちづくりへの期待から、大都市の都心部、地方都市の商業地、郊外の住宅地など、全国各地でエリアマネジメントの取組みが実践されています。

各地のエリアマネジメントの事例をいくつか挙げさせていただきます。

小杉駅周辺エリアマネジメント(武蔵小杉)

小杉駅周辺地区では、横須賀線武蔵小杉駅の設置や複数の開発事業が進行していますが、この地区はグランドや大規模工場跡地などで居住者がほとんどいなかったため、地域コミュニティの形成や安全安心のまちづくりといった、暮らしに密着した課題への対応が求められています。

町会・自治会の加入率が低下している昨今、新住民しかおらず、地域の自治が存在しない場合、新たなコミュニティが組織づくられた事実は、現在の町会・自治会のあり方のヒントになります。

大手町・丸の内・有楽町地区のまちづくりとエリアマネジメント

通称・大丸有地区では、公民協調によるサスティナブル・ディベロップメントを通じて、120haのまち全域で「新しい価値」「魅力と賑わい」の創造に取り組んでいます。

2017年第1回先進的まちづくりシティコンペ 国土交通大臣賞を受賞しております。

地元住民はほとんどおりませんが、地元企業が中心に入り、エリアマネジメントを行い、まちの活性化を行っております。

歌舞伎町タウンマネジメント

歌舞伎町は昭和50年代中ごろから性風俗店舗が乱立し、社会的な問題へと発展、地元・区・議会が一体となり、20万人近くの署名、浄化運動の結果、風俗営業等の規制及び業務の適正化に関する法律とその施行条例が改正され、ソープランドの新設禁止等が定められました。

しかし、その後も新たな性風俗店舗の登場と法規制のいたちごっこが繰り返されました。

プロジェクトは、歌舞伎町版家守事業を通じ、事業者誘致だけでなく、シネシティ広場や大久保公園といった公共空間の活用社会実験なども行っています。

特に大久保公園で食フェスを精力的に開催、小学校を吉本興業に貸し出すなど、様々な試みは賑わいを創出しております。

エリアマネジメントの考え方

上記3つのエリアマネジメントは大きく分けると住民主体、企業主体、行政主体といえるものであります。

地域の住民、企業、資源などの特性を勘案し、地域にあったエリアマネジメントが必要だと考えます。

中野の特性とは

地域の特性に合わせたエリアマネジメントが必要なわけですが、中野の特性とはなんでしょうか。

EIKICHI/写真AC

中野に住んでいると、何でもあるけど、何にもないというイメージがあります。

これは新宿・渋谷・池袋に近く、JR中央線・東京メトロ丸の内線で東京駅などに一本でいける交通の利便性が高いことにより、東京都外から転入する際にスタートアップしやすい地域性であることが要因と考えます。

様々な方々が中野に転入することで、多様性あふれるまち、となっており、何でもあるけど、何にもないという状況になります。

また年間の転入出はおよそ10%であり、人の出入りが激しいという地域特性があります。

ひとつのキーワードは多様性です。

多様性については「ダイバーシティマネジメントのすゝめ」で筆者が論じておりますのでご参考にしてください。

また中野区の歴史を鑑みたときに面白い歴史があります。

犬小屋は中野の黒歴史ではなかった:郷土愛を育む歴史」にまとめさせていただいておりますが、JR中野駅周辺はときの政権に蹂躙されつつも新しいものを創り続けたまちであります。

歴史上注目を浴びたのは生類憐みの令で建設された犬小屋です。

現在の生類憐みの令は、人権擁護、動物愛護の意図があったと解釈もあり、そのシンボリックな施設である犬小屋は、中野区の輝かしい歴史と考えることができます。

その後、犬小屋を廃し、桃の木がたくさん植えられ、桃園と呼ばれるようになりました。一般人も入ることを許された園ということで、日本初の公園といえるそうです。また桃園は花見の名所で花見文化の形成に一躍買ったとのことです。

1889年には中央線の全身である甲武鉄道が開業され、1897年には陸軍鉄道大隊ができて鉄道研究が行われ、1904年、飯田町駅と中野駅の区間を電化、国鉄初の電車としました。国電つまりJRの発祥の地といえる、始発・終着駅でありました。

その後、陸軍中野学校、警察大学校、中野区役所、中野サンプラザ、オフィス、大学などへとなっていきます。

中野区が研究拠点であり、様々な社会実験を行っていた歴史があります。

もうひとつのキーワードは社会実験です。

社会実験とは

社会実験は、地域におけるにぎわいの創出、まちづくりに資するため、関係行政機関、地域住民等の参加のもと、場所や期間を限定して当該施策を試行・評価し、もって新たな施策の展開と円滑に事業を執行することを目的とするものです。

私は過去に打ち水に関する社会実験を行ったので一事例として紹介させていただきます。

「ヒートアイランド現象の緩和」を目的として、風呂の残り水や雨水や再生水の二次利用、再利用を促進させる「打ち水大作戦」を実施することになりました。

打ち水の効果の検証で私も参画し、気温は0.5℃低下で微減、湿度はほぼ変化なく、地表面温度低下に伴う地面からの赤外線が大幅に減少するため、人の表面温度が6℃以上低下するなどの成果を得ました。

効果が立証され、その後全国的に実施された時期もあり、最近では東京オリ・パラに向けて、熱い東京の気温を下げようと「打ち水日和」というイベントが開催されております。

その背景には社会実験がありました。

中野のエリアマネジメントとは

「多様性×社会実験」これが中野のエリアマネジメントにマッチすると考えます。

多様性ある住民の意見をひとつにすることは困難です。

しかしそれは中野区の個性で、そのまま活かすべきです。

エリアマネジメントにおいても多様性を活かし、何か一つを確立するのではなく、また何か一つに執着するのではなく、常に様々なことを試せる、様々な社会実験がやりやすい環境づくりを目指すべきだと考えます。

常に新しいことができれば、常に新しい人たちが集まり、賑わいが創出できます。

多様なイベントを開催したり、犬小屋を期間限定復活させたり、ドローンを飛ばしたり、IoT・AI・ビッグデータの新技術の実験フィールドにしたりと無限の可能性が感じられるマネジメントが必要です。

そしてその社会実験は、内容によっては国家戦略特区に申請してまで実験ができる環境づくりを行政とエリアマネジメント会社が粘り強く実践していく気概が必要と考えます。

ワクワクするような区政に向けて、エリアマネジメント構築が不可欠です。

加藤 拓磨   中野区議会議員
1979年東京都中野区生まれ。中央大学大学院理工学研究科 土木工学専攻、博士(工学)取得。国土交通省 国土技術政策総合研究所 河川研究部 研究官、一般財団法人国土技術研究センターで気候変動、ゲリラ豪雨、防災・減災の研究に従事。2015年中野区議選で初当選(現在2期目)。公式サイト