台湾総統選:勝てたのは〇〇のおかげです。

日本では3連休の初日、11日に投票が行われた台湾の総統選挙で、民進党の現職蔡英文氏が再選されました。詳細な結果は与党・民主進歩党の蔡英文氏が約820万票(得票率57%)で、最大野党・国民党の韓国瑜氏が約550万票(得票率39%)でした。今年に入ってからは世論調査結果の公表が禁じられていましたが、昨年12月29日の世論調査では、事実上の一騎打ちになっている韓氏に蔡氏がかなりの差をつける形で、支持率は、蔡氏の45%に対し、韓氏が29%で16ポイント差でした。

韓氏は世論調査では一貫して劣勢でした。そこで支持者に対して、世論調査で支持者を聞かれたら蔡英文指示と嘘の答えをするように求め、調査を混乱させ、支持者たちが信じないようにという撹乱戦法をとりましたが、結果は蔡氏の再選となったわけです。

世論調査で一貫してなぜ韓氏が劣勢だったのか。
一つは韓氏に政策が乏しかったこと、もう一つは2018年12月に高雄市長になってから、まだ1年もたたないで総統選挙に出馬をしたということなどがあります。これは韓氏の身から出たさびとになるわけですけれども、それでも昨年の今頃は総統選挙がどうなるかわからないと言われていました。しかし、韓氏は劣勢、裏を返せば蔡氏がずっと優勢でした。その最大の理由は実は台湾の外にあったんです。

それは何かというと中国です。というのも、香港で続いている民主化運動が蔡氏の優勢を保ち続けて再選にまで繋がったんですね。これは2019.06.20 民衆の声 【香港デモ】の記事でも書きましたが、香港がイギリスから中国に返還されたとき、中国は香港を一国二制度、すなわちメインチャイナの社会主義と香港の資本主義、そして香港の人々には自由を約束したんですね。

ところがこの約束が破られようとしています。だから香港で起こっている民主化運動に繋がっています。中国は台湾にも一国二制度を迫っているわけですが、香港の現状を見た台湾の人たちは中国のやり方を見て危機感を覚えたわけです。

蔡英文氏は1月1日の新年談話でこう言っています。
「民主主義と専制(政治)は同時に同じ国家に存在できない」
要は台湾に対する一国二制度を拒否しているわけです。
この方針を明確に打ち出した蔡氏が勝ったので、裏を返せば、最終的に勝たせたのは中国共産党だと言えますね。

1月6日、中国の北京では、南太平洋にあるキリバスの大統領を習近平国家主席が盛大にもてなしていました。キリバスは昨年9月に台湾と国交断絶し、中国と国交を樹立しました。ですから台湾の総統選挙の直前のこの時期にあえて中国に大統領を呼んで盛大にもてなして、多くの経済支援を約束しました。いわば札束攻撃とも言えるわけです。

1月1日の新年談話で蔡氏はこうも言っています。
「主権は短期的な経済的利益と引き換えにできない」
これは台湾のみならず日本や他の国々にも当てはまることだと思いますけどね。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年1月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。