2020年に入って早々、トランプ大統領がイラン革命防衛隊のスレイマニ司令官殺害を断行し、新型肺炎が大流行の兆しをみせるなど今年は波乱の幕開けとなりました。様々なリスクに直面しつつ、2020年の最大のリスクで忘れてならないのは、米大統領選でしょう。
運用資産2.2兆ドルを抱えるJPモルガン・プライベート・バンクも、富裕層の顧客向けに「過激な左派による政権奪取」こそ、今年最大のリスクと掲げます。サンダース候補を筆頭に、法人税引き上げや富裕税導入、自社株買い規制など経済と金融市場を揺るがす民主党候補の政策について、誰もが意識せずにはいられません。実際、本日こそ一部ドラッグストア関連と製薬関連が買い戻されたとはいえ、新型肺炎発生後、サンダース候補の支持率上昇を受けてヘルスケア関連は下落してましたし。
足元で株安・債券高・円高とリスク・オフの展開を迎えているとはいえ、慣例として米大統領選イヤーは米株相場にとって決して悪い年ではありません。1928年以降、大統領選イヤーは23回を数えS&P500では17勝6敗、平均リターンは7.1%高なんですね。最も力強い大統領選の直前の平均値13.5%高を下回るものの、パフォーマンスとしては2番目の力強さをみせます。
今年は、米連邦公開市場委員会(FOMC)が年内据え置きを表明済みで、短期証券買入も状況次第では現行の6月末から延長される可能性もあり、底堅く推移する公算が大きい。ウォール街の米株担当ストラテジストの2020年予想中央値も、2019年12月早々の時点で3,325と、2019年末から約3%高を見込んでいました。
2016年の米大統領選で世界が変わった事実を踏まえれば、誰が勝利するのか誰もが事前に占いたいはず。そこで、まず州別の過去データを確認してみました。1900年以降、30回の大統領選での勝者を最も多く選出した州はオハイオ(勝率93.3%)、続いてニューメキシコ(同88.9%)、ネバダとミズーリ(同86.7%)、イリノイ(同83.3%)となります。
2000年以降で最も正確に大統領を選出した州はオハイオとフロリダで勝率は100%、続いてアイオワ、インディアナ、バージニア、ノースカロライナ、コロラド、ネバダが80%となります。こうしてみると、注目すべきはオハイオ州とフロリダ州ということが分かります。しかも、共和党候補でオハイオ州を落として大統領に就任した人物はゼロ。アノマリーに従うなら、トランプ氏再選のカギは、特にオハイオ州にあると考えられます。逆に、民主党候補はメリーランド州で勝たねばなりません。
この2つの州には、別の共通点があります。それは、2012年の米大統領選で民主党候補に投票しながら、2016年に共和党候補に鞍替えしたということです。同様に2016年にトランプ氏にシフトした州は、他に4州(アイオワ州、ウィスコンシン州、ペンシルベニア州、ミシガン州)存在します。しかも、これら4州にオハイオ州とフロリダ州を合わせた6州は過去3回の選挙で正確に大統領となる候補を選出しているだけに、今年も熱い視線が注がれそうです。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2020年1月29日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。