対ウィルス戦争:「反転攻勢」ピンチをチャンスに

松川 るい

もはや新型コロナウィルスは世界的危機だ。感染者は10万人を超えた。安倍総理は、全国一律休校(小中高、支援学校)を3月2日から春休みまで続けて行うことを要請した。

国民に対し、「この2週間ほどが、感染拡大するか終息に向かうかの瀬戸際。政府だけではこのウィルスとの戦いには勝てない。これにより生じる不利益については政府が対応する。内閣総理大臣として国民の安全と健康を守る義務がある。全国一律休校は、自分の決断であり、自分が責任を持つ」と語り掛けた。

また、水際対策としては遅きに失した感はあるも、ようやく中国全土からの入国制限、そして韓国全土からの入国制限も実施することになった。これから緊急事態に対応するための新型コロナウィルス対策の特措法も通す。

1. 休校措置はショック療法

全国一律休校措置についていろいろな批判もあるが、我々日本国民の認識を全国レベルで一変させるショック療法的効果をもたらしたという意味での効果は大きかったと思う。老若男女、全国津々浦々での全国民の意識を変え、これまでの「緩い対応」を転換するきっかけになっているからだ。

編集部撮影

これまで、「東京で増えたんだって」、「北海道大変だね」と、殆どの地域では自分事と考えられていなかった殆どの日本人に対し、我々は、「ウィルスとの戦いに入る」ことをわからせた。これは、日本国民全員で頑張らないと克服できない、だから参戦してくれということだ。

このウィルスについてはわからないことが多い。全国一斉休校についても、子供は感染しないから(したとしても軽症だから)意味がないという人もいる。地域によって違うので一斉でなくていいのではないかという意見もある。一理あるが、私は少なくとも子供が「感染源」になってクラスターを増やすことを防止する効果は間違いなくあると思う。

子供達は、毎日通学する、公共交通機関を使って通学する生徒たちも多い。通学だけではない。塾に行く、習い事に行く、中高生なら映画を見に行くコンサートに行く、本当によく移動する。感染していた場合、自分は元気でも、様々な場所で知らない内に感染を広げる可能性は極めて高い。

したがって、休校して自宅待機を基本として感染源となるリスクを下げること、それにより自身が感染するリスクを下げることは対策として有効だと考えられる。なお、この点は施設や主体により異なる。例えば、介護のための施設に入っている高齢者の方で、管理されない外出を頻繁にしない方は、感染源になってクラスターを広げるリスクは低く、また、外部からのアクセスも管理されているので、自宅よりも施設にいる方が安全だと考えられる。

したがって、要介護の高齢者施設では、最も重要なことは施設に外部から感染リスクを持ち込まないことであろう。現在、政府もこれを基本方針としているが、学校の場合とは異なり、高齢者施設についてはこの方針を変更する理由はないと考える。

また、上述のとおり、この措置によりようやく全国津々浦々の大人たちが危機を認識し、集会や不要な移動を自粛するようになることにより、結果的には、相当な接触抑制効果を日本全体で実現する効果はある。実際、今や、一斉休校前にはまだ人が沢山いた観光地や居酒屋も随分人が減っている。

無論、そのことは裏返せば、これにより、経済には大変な打撃になることは間違いない。しかし、一時的に経済にダメージがあっても、早期に収拾モードに入ることが、国民の健康にとっても、経済にとっても、オリパラ開催国である日本の国際的評価にとっても結果的にはプラスに働くのではないか。日本が危機管理のできる国なのかそうでないのか世界が見ている。

2. 子供との時間を持つ機会に

この休校措置はまあまあ長いが永遠ではない。春休みを合わせれば、子供達が学校にいかないのは約1か月。そんな綺麗事をと言われることは覚悟の上だが、この機会を、「大変だ!」と嘆くのではなく(無論とても大変なのだが)、是非、「どうどうと休んで子供と一緒に過ごすチャンス」に変えてもらいたい。

acworks/写真AC

中学生や高校生は別段、小学生、特に、低学年のお子さんを独りで留守番させることはできない。それはあらゆる意味で危険なことだ。両親のいずれかが自宅にいて監護しなければならない。夫婦いずれかが専業の場合は良いが、既に、日本の7割の家庭は既に夫婦共働きであり、一方が休み必要がある方が大半だろう。仕事の関係で本当に休めない方も多くいらっしゃると思う。

しかし、既成概念を捨て、まず、優先順位として、仕事を休むか在宅にすることを考えてもらいたいのだ。学童や親預けなどで、どうやって仕事を継続するかをまず考えるのではなく。夫婦で分担すれば、せいぜい一人当たり1、2週間のことなのだ。本当に一生仕事していく中で、今、子供がこの歳でいる時に、せいぜい1回あるかないか。本当に無理なことかどうか考えてもらいたい。

無論、医療従事者や保育所や学童の関係者といった休まず仕事を継続して頂きたい方、その他業種でも、そうはいっても仕事の関係でどうしても休めない方々も、共働き、ひとり親、正規非正規関わりなくいらっしゃる。この特殊な期間において、学童や保育所は、そのような方々のために安心して使って頂ける場所でなければならない。多くの方が就業継続を優先して行動してしまうと、却って子供達が密集して感染リスクが高くなってしまい、今こそ活躍して頂かなければならない医療関係者、保育介護関係者などの皆様が安心して仕事できなくなるという本末転倒の事態が起きる。

なので、仕事を休むことができる方、在宅で対応できる方は、学童が空いていたとしても、仕事を休む、在宅に切り替えるということをしてもらいたい。そうすることこそが、国難を乗り切る上での重要な貢献なのだ、というどうどうとした気持ちで。

3. 夫婦で分担して

そして休業をする際は夫婦で分担してもらいたい。妻だけではなく夫婦でちゃんと均等に分担して仕事を休むなり在宅勤務に変えるなりして、子供を均等に見るようにしてもらいたい。結局、こういうときにはいつも女性が仕事を休んで子供を見る、というのは女性活躍に反している。男性も子育てと家事を分断する義務がある。そして、それは喜びや新たな家族のかたちの発見につながると思う。

そんなこと言っても、ひとり親は無理じゃないかと言われると思う。でも、今回だけは、ひとり親の方こそ子供さんと一緒にいる時間を作る機会に変えてもらいたい。ひとり親の子供は親との時間が少ない。金銭面だけでなく時間面でも困難を抱えているのがひとり親家庭だ。今回は国難であり、日本国民のだれもがそれを理解してくれる。ひとり親を雇っている企業経営者の方々に心からお願いする、ひとり親の従業員こそ、一定期間だけでも良いので休ませて(在宅勤務でも)上げて下さいと。

私は、ひとり親家庭や休業補償から漏れるフリーランスの方々については、政府が一律の支援金を御家庭に直接配布すべきだと思うし、そのような提言を女性議員達のグループで行っている。

4. 劇的ICT化、業務合理化と不要不急の会議の撲滅の機会に

本当にこの会議や打ち合わせは必要なのか、必要性はあるも対面である必要はあるのか、毎日会社に行く必要があるのか、この紙決裁は必要なのかメールで良いのではないか、報告は対面である必要があるのか、電話で良いのではないか、様々な仕事のやり方を見直す良い機会だ。また、オンライン教育、オンライン診療といった、ICTを活用した様々な活動を試す良いチャンスでもある。

5. 反転攻勢

早朝の大阪市中心街(DR_AC/写真AC:編集部)

日本の状況は、イタリアや韓国とは違う。感染の爆発的拡大期には入っていない。死亡者の数も12人と比較的少ない。これは、医療関係従事者、厚生労働省はじめ政府関係者、自治体、自衛隊、全ての関係者の不眠不休の献身的な努力によるものである。全ての関係者の皆様に心からの敬意と感謝を表する。

中国に対する水際対策の不徹底とダイヤモンド・プリンセス号の対応の「不備」で世界における日本の危機管理に対する評判は落ちてしまったが、今、早期決戦で接触を避けるための果断な措置を取れば、感染者の増加カーブを緩やかにし、できるだけ早くピークアウトすることは十分可能だ。

今こそ国民皆が一致結束して、徹底的な感染拡大防止策を取れば、日本は、感染者数を抑え、死亡者数を最小限に留め、陽性者の治癒割合を上げることができる。そうすれば、世界中で感染者が広がっている中、結果的には、日本が最も適切な危機管理対応をした国として評価されることもあり得るかもしれない。


編集部より:このブログは参議院議員、松川るい氏(自由民主党、大阪選挙区)の公式ブログ 2020年3月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は、「松川るいが行く!」をご覧ください。