軽装甲機動車は完全な失敗作

軽装甲機動車は完全な失敗作です。その理由は陸自の無能です。
運用者としての知見が全くかけていたからこういう胡乱な装甲車を主力APCにしたんです。
専門家として落第です。あまりにもひどすぎる。

軽装甲機動車(陸自第6師団サイトより:編集部)

小さすぎる

4人乗りでカーゴスペースすらない軽自動車を主力APCにしたのが間違い。下車歩兵用装備もまともに詰めない。本来は装甲ウエポンキャリアーとして開発されたんですがねえ。

軽装甲機動車をAPCとして運用する陸自の見識(Japan In-depth)

その理由の一つはCH-47チヌークに収容して空輸するという奇天烈な運用を前提としたからです。これが空挺用装甲車ならばいいでしょう。イタリアのピューマもその類ですが、空挺用と割り切っています。主力APCを全部ヘリで空輸なんて妄想レベルです。そのために必要な車内容積と防御力を犠牲にしたわけです。

全員下車が基本というコントのような運用

機械化歩兵の利点をみずから捨てている。鍵をかけて全員下車して戦うなんて平和ボケもいいところです。演習では留守番一人を残しているようです。
当然ながら下車歩兵と車輌を連携して緊密な運用ができない。

無線機がない

隊長車以外無線機がない。全員下車するから車載型無線機はいらない、というこれまた平和ボケ発想です。ただでさえ分隊が2両に分散されているに。それに当然ながらナビゲーションシステムやバトルマネジメントシステム、ネットワーク機能が搭載できません。

固有火器がない

これも全員下車するから車載火器はいらんだろう、という「おおらかな発想」。乗車しているときは携行用のMINIMIがあるじゃねえか、と。
当然下車歩兵が車輌から火力支援は受けられない。これは小隊規模での火力が極めて低い普通科にとっては致命的。

しかも5.56ミリのMINIMIで威力が低いので、7.62ミリ機銃、小銃に撃ち負ける。まして通常のAPCは普通に12.7ミリ機銃を搭載しているので敵の機械化歩兵と遭遇したら一方的に虐殺されます。これも軽量化、低コスト化のためでしょう。

車輌から弾薬補給や負傷者の急送もできない

全員下車して車輌から離れるので、弾薬の補給などができない。また車体が小さいから負傷者を寝かして後送することもできない。そもそも車輌を置き去りにするので負傷者の後送自体が困難。そもそも主力APCとして開発された96式装甲車があるのに別途小型装甲車を開発調達して2種類の主力装甲車を整備するのは異常。

防御力が低い

陸幕が「軽装甲機動車」に要求したのは陸自で使用している5.56×28ミリ弾や7.62×39ミリカラシニコフ弾に耐えられること。同じ7.62ミリ弾でも小銃だけでなく、機銃などで使用されるNATO標準の7.62×51ミリ弾、ロシア系の7.62×54ミリ弾では貫通するだろう。当初は側面ドアのガラスは防弾ですらなかった。

そして当初は予備のタイアすら搭載されていなかった。演習地のみで使う想定だったのだからだろう。

そしてスポールライナーは採用が検討されたが、コストが上がるので却下された。車体下部は精々手榴弾に耐えられる程度で、耐地雷能力は皆無に近い。

しかも現場の隊員は指揮官クラス含めて防御力を知らされていない。人命軽視。

機動力のなさ

陸幕は、殆ど装輪車両は道路で使うこという奇特な運用を前提とているので、96式同様に路外装甲能力が極めて低い。野戦では使い物にならないレベル。トップヘビーで転倒しやすい。

エンジンの騒音とタイアの振動が大きい

しかも椅子の作りも悪いので乗員の疲労が大きいし、音声無線の通話にも支障がある。

まあ、96式がまともな装甲車だったらこれを主力として、軽装甲機動車のような車輌は、連絡、対戦車、偵察、パトロール、空挺用などに使用するべきだったわけです。
ところが96式もまともな路外走行能力がなく、地雷にもよわくて生存性が低い。

これは陸幕が道路法の規制の横幅2.5メートル以下にこだわったからです。これは例外規定があって、それを使えばよかったわけです。それは16式機動車で実証されているわけです。

要は96式よりも安い装甲車が調達できればいいや、という組織内の論理で作った装甲車ということです。また96式ことなり固有の乗員が不要ということでしょう。

普通科部隊に96式を導入すれば車両用の人間が多く必要になります。であれば充足率が低くなる。普通科連隊の数を減らすと指揮官ポストが減るのが嫌だ、というのも軽装甲機動車導入の要員でしょう。

陸自ムラの、ムラの論理でしか物事を考えていない。当然実戦であれば相手は陸自ムラの論理なんぞを忖度してくれません。

安物の買いの銭失い、の典型例です。つまりは実戦を想定しておらず、身内のメンツさえ立てればいいや、という自閉的な思考の結露が軽装甲機動車です。つまり、防衛省、自衛隊、メーカーとも装甲車を調達開発する当事者意識と能力に欠けているということです。

Japan In Depthに以下の記事を寄稿しました。

現代の主力戦車の進化は限界 前編

現代の主力戦車の進化は限界 後編

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。

防衛記者クラブの「台所事情」何とも厳しい実態:不要不急の支出、財政破綻の危機を迎えていた


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2020年4月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。