「週刊東洋経済」で長らく百貨店を取材してきた梅咲恵司さんの『百貨店・デパート興亡史』を拝読。百貨店はイノベーションの積み重ねだということを改めて実感しました。
世界で最初の百貨店フランス・パリの「ル・ポン・マルシェ」が1852年にオープンし、「定価明示」「現金販売」「返品可」など公平で透明性の高い販売方法を採用するはるか以前から、日本では三井の越後屋などがこれらの販売方法を実践していましたが、
速やかにデパートメントストア方式を取り入れるだけでなく、日本風にアレンジしてさまざまなサービスを生み出しました。
・「お子様ランチ」
・「演奏隊」「音楽隊」
・「屋上遊園」「屋上動物園」
などで家族連れをターゲットにする。
・優良顧客限定の「お帳場制度」
・「エレベーター」「エレベーターガール」「エスカレーター」
などを取り入れ、憧れや高級感を演出する。
・駅直結のターミナルデパートをつくり、利便性を高める。(大阪の阪急百貨店などの鉄道系の百貨店だけでなく、呉服屋系の百貨店においても、三越も自社の負担で地下鉄の新駅をつくる(今でも三越前という駅名になっている。)、銀座駅に共同出資するなどした)
・三越の元禄ブームや、モダンな洋館など流行をつくる。
また、関東大震災後に三越が立て替えるときには、呉服屋方式で履物を脱いで上がるのか、履物のまま店内に入るのか、消費者から広く意見を求める消費者参加型広告をつくる、あるいは、震災直後から、上野のいとうや(現在の松坂屋)は、大阪や名古屋から仕入れた商品を無料であるいは安価で配布するなどCSVの先駆けのようなことも行っている。
東証一部上場企業の中で、初めて女性を役員にしたのも百貨店だったという。
まさにイノベーションの連続!
最近はネット販売全盛だが、まだまだリアルにしかできない、リアルの方が面白いこともたくさんある。次は、どのようなイノベーションが生まれるのだろうか。期待したい。
編集部より:この記事は、井上貴至氏のブログ 2020年4月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『井上貴至の地域づくりは楽しい』をご覧ください。