今週のメルマガ前半部の紹介です。
先日、ワイドショーの取材を受けたある現役医師の告白がネット上で話題となりました。要約すると、自分が特に意識して主張した部分がごっそりカットされ、制作サイドが用意した(本人の意見とは180度真逆の)主張に沿うような形でオンエアされていたとのこと。
【参考リンク】テレ朝ワイドショーに医師が困惑「真逆の意見として放送された」
まあ多少なりともメディアと付き合いのある人なら経験あるでしょうけど、リアルタイムで進行中のコロナ禍に際して、こういう生々しい形でメディアによる“脚色”が明らかになったことは、多くの人に衝撃を与えたようですね。
政府はポストコロナを見据え、我々に「新しい生活様式」なるものを提案しています。手洗いを徹底し、密な屋内空間を避けるといった内容ですね。
【参考リンク】新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」を公表しました
個人的にはそこに「メディアとの付き合い方を見直す」という一文もそろそろ追加するべきタイミングじゃないかと感じている次第です。
というわけで、今回はメディアのメカニズムについてまとめておきましょう。
多くのメディアは事前にストーリーを組んでいる
以前も少し触れましたが、記者やプロデューサーといったメディアの人たちが取材をする場合、取材対象から話を聞く前の段階ですでに頭の中なり手帳の中にプロットは出来上がっています。
全員とは言いませんけれども8割くらいはそうです。もしどこかの記者さんからあなたのもとに取材依頼が来たとしたら、もうその時点であなたにしゃべらせる内容はほぼ確定しています。あとは会って実際にその話をさせるべく質問(悪く言えば誘導)するわけです。
たまに「寄稿はするけどメディアの取材は一切受けない」という学者がいますが、あれはこういう恣意的な解釈、切り取りを嫌ってのことですね。
筆者がこのことに気づいたのは十年以上前になります。当時やっていた連載で、いろいろな経歴の人物に取材するノンフィクションものがありました(後「3年で辞めた若者はどこへ行ったのか アウトサイダーの時代」として出版)。
確か2週間に一度の連載だったと思いますが、自分でアポイントとって2,3時間話を聞いて、それをベースに執筆して、足りない部分があればまた連絡とって……みたいなことを毎回やっていると全然時間足りないんですよね。毎回胃に穴が開くんじゃないかと思うほどきつかった記憶があります。
で、知り合いの記者にその話をしたらこんなことを教えられました。
「そのやり方はすごく古くて、今やっている人はほとんどいないと思いますよ。今はあらかじめ概要を描いておいて、それにふさわしいコメントの出来る人に最初から絞って取材するんです。そうすれば最初からピンポイントで質問もできますしね。そうでもしないとカバーする範囲が広すぎて対応できませんから」
その話を聞いてから、筆者は取材を受ける時に、相手が何を書こうとしていて、自分に何を求めているのかなんとなくわかるようになりましたね。あ、筆者は性格がかなり悪いので自分の意に沿わないコメントは意地でもしませんが(苦笑)
それと、これも意外に知らない人が多いんですが、記事確認というプロセスがあります。コメントを含んだ記事を事前に取材対象にチェックさせるプロセスですね。メディア的に長くタブーだったそうで、60代以上の記者やOBの方はやったことないよという人も多いんですが、これも現在は割と普通に行われていたりします。
裏を返せば「こちらで解釈したものを書くけど、事前にチェックさせてあげるから文句があるならそこで言ってね」ということでしょう。今回はVTRということで事前チェックが出来なかったことが裏目に出た形ですね。
以降、
コロナで浮き彫りになったメディアの不都合な真実
これからのメディアとの付き合い方
Q:「在宅勤務で仕事に集中できません」
→A:「まあ会社でもそんなに集中できてなかったはずですよ」
Q:「『それは自分の担当業務ではないです』という部下をどうすべき?」
→A:「モチベーションがマイナスを向いちゃってるんだと思います」
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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2020年5月21日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。