Lancetのオンライン版に「Hydroxychloroquine or chloroquine with or without a macrolide for treatment of COVID-19: a multinational registry analysis」というタイトルの論文が公表されている。トランプ大統領がコロナ感染の予防目的で服用していたとされるマラリア治療薬を評価したものである。
結果は悲惨ともいえるものである。96,032名のコロナ入院患者(中央値53.8歳、46.3%が女性)を研究対象とした。
14,888名のマラリア治療薬を服用した患者の内訳は
1,868名はクロロキン
3,783名はクロロキンとマクロライド
3,016名はヒドロキシクロロキン
6,221名はヒドロキシクロロキン+マクロライド
であり、
81,444名はコントロール群とした。
96,032名の内、10,698名(11.1%)は院内で死亡した。
コントロールグループの致死率は 9.3% 心室性不整脈は 0.3%
クロロキン群 16.4% 6.1%
クロロキンとマクロライド群 22.2% 8.1%
ヒドロキシクロロキン群 18.0% 4.3%
ヒドロキシクロロキン+マクロライド群 23.8% 6.5%
結論は、これらの薬剤は何の利益もなく、入院患者の死亡率を高めたとあった。
結果は残念としか言いようがないが、このような試験が10万人規模で実施されたことは驚嘆に値する。どのようにしてデータを集めることができたのか、謎ではあるが。新規感染症の薬剤開発には、すでに広く利用されて安全性が確認されている薬剤から可能性のあるもの見つけ出し、評価していくことが重要だ。しかし、この副作用の多さは????
…..と書いてブログのアップしようとしていたところ、共同通信が「英医学誌ランセットは4日、新型コロナウイルス感染症に有効かどうか注目されている抗マラリア薬について、死亡率や不整脈が増加する可能性が高いと報告した論文を米国とスイスの著者らが撤回したと発表した。患者データの検証ができないことが理由。」と報じた。Lancetをチェックしても、撤回という事実は見当たらなかった。
コロナ関係なら、何でもありの様相だが、やはり、この10万人単位は無理なのか?
編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2020年6月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。