10年間進歩はあったのか?今こそ、医療の未来を見据えて

中村 祐輔

先ほどいろいろと調べごとをしている時に、2011年に内閣官房医療イノベーション推進室で作成した資料が目についた。推進室でというより、私が個人的に作成した資料に近いが、下図がその図だ。

医療・医学研究の将来についての国としての青写真は今でもない。各省庁の課で作成した資料が局でまとめられ、さらに省庁で束ねられたものを、ホッチキスで一つにしたものを国家戦略と呼ぶ。10年前も、今も、この姿は変わっていない。悲しいが、1020年後、50年後の国家ビジョンなどないのだ。

こんな非常時に案を考えても、結局は火事場泥棒が横行する。東日本大震災後に将来の医療の在り方を1枚の図にまとめた。これを利用した火事場泥棒が、東北にできたメディカルメガバンクだ。震災復興とは全く関係のないプログラムができた。津波被災者の健康調査が化けて、姿を変えたものだ。

旧民主党政権の幹部には、今の火事場泥棒を責める資格などない。どうして、今、困っている人に目が向かないのか。日本はどこまで劣化したのだろうか? 

政治も医療も、根底にあるべきものは人への思いやりのはずだ。戦後75年、官僚に依存してきた弊害を正そうとした民主党であったが、基盤となる学習能力もなく、真贋を見極める力もなく、威張り散らした挙句、信を失った。大震災という障害の前に、一瞬で期待を絶望を変えてしまった。

現政権に対する不満が渦巻いているが、その時の絶望感の大きさ故に、現状の方がましと思っている心理が働き、旧民主党グループへの期待が広がらない。批判は得意だが、あるべき姿を示せない。大阪の吉村知事のように何をなすべきなのかを語ってほしいものだ。

それにしても、東日本大震災をコロナ感染と置き換えても、医療の課題はほとんど変わらないのは不思議だ。世界中で情報革命、人工知能革命が起きているにもかかわらず、日本はこの第4次産業革命に取り残されている。コロナとの戦争は一時休戦中・一段落だが、こんな時こそ今何をすべきかを整理すべきではないのか?

医療のIT化、AI化は未来の医療にとっても、来るかもしれない第2波対策にも必須である。中国、台湾、韓国、シンガポールと比べても医療のIT化、人工知能の導入が大きく遅れている。

まずは、2030年後を見据えたAI化された医療の青写真を作成して、それを各省庁に落とし込むことが国を活性化し、この国の医療を救うために必要だ。

 

PS: ホストに積極的にPCR検査を受けるように勧めるという。どう考えても、医療関係者、特にコロナ感染症患者を受け入れている医療従事者や高齢の入院患者だろう。優先する人が違っている。


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2020年6月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。