バイデン候補は14日、4年間で2兆ドルの気候変動対策を発表しました。
政策提言の通り、最もプログレッシブ色を押し出した内容となっています。
例えば金額ベースでみても、2019年6月時点で気候変動対策費は10年間で1.7兆ドルでしたから相当積み増していますよね。
また、当時は「2050年までに100%再生可能エネルギー・システムの導入と二酸化炭素(CO2)の排出ネットゼロを目指す」ものでしたが、今回は「2035年までに発電網からの(CO2)ゼロを目指す」わけですから、意欲的です。
それもそのはずで、今回の気候変動対策はワシントン州のインスリー知事が提案し、ウォーレン上院議員が支持した案を多く盛り込んだのです。ウォーレン議員は言わずもがな、リベラルで知られるワシントン州知事ですからインスリー氏もプログレッシブの一人なので、なかなかパンチが効いてます。
今回の気候変動対策、主な7つの柱は以下の通り。
個人的に注目したいのが、農業・保全にある「市民気候部隊(CCC)」の設立です。そう、ルーズベルト政権のニューディール政策の一環で創設された市民保全部隊(CCC)の環境版というわけです。ちなみに当時のCCCは、第2次世界大戦開戦と共に自然消滅しました。
バイデン氏のCCCは、若者を中心に職業訓練の場を与え、環境技術を学び、スマート農業や環境保全に役立てるというシステムです。ここでも、最低250万人の雇用創出を掲げます。
こうしてみるとサンダース上院議員との政策提言は、この気候変動対策のプレリュードだった気さえしてきます。余談ながら米国製太陽光パネル5億枚、風力タービン4万基とか、まるで餃●の王将のごとくでしたが、その裏には壮大な計画が存在したというわけですね。
この方が太陽光パネルの需要拡大を見込んで銀先物が持ち直しを指摘していらっしゃいましたが、背景にバイデン氏の政策があったとしてもおかしくありません。実際、再生可能エネルギーに強いクリアーウェイ・エナジーやブルックフィールド・リソーシズ・パートナーズ、ネクステラ・エナジーやなどは、他電力株より好調です。
話をバイデン氏の気候変動対策に戻して。
自動車の項目の「サプライチェーンの国内回帰などにより100万人の雇用創出」や「発電網のCO2排出ネットゼロを目指し新たに何百万人の雇用創出」などなど、経済復興・雇用促進の側面が強いことが分かります。
プログレッシブ全開な内容が盛り込まれた気候変動対策、いっそのこと「グリーン・ニュー・ディール政策2.0」として打ち出せばよかったのにと思いますが、そこは左派色が濃厚な名称を回避したかったのか。
いずれにしても近年のハリケーン直撃数の増加や洪水、竜巻など自然災害の増加を受け、米国人の間で気候変動への意識が足元で急速に高まり、中国に匹敵するほどなのです。バイデン陣営は世論の動向を受け、気候変動対策でプログレッシブの方向へ舵を切っても問題なしと判断したのかもしれませんね。
チャート:「米国の意識」に対するアメリカ人の世論
ところで肝心の対中政策ですが、まだバイデン氏は明確に打ち出していません。ただ、政策提言の翌日に発表した7,000億ドルの経済対策と共に中国を念頭に通商政策の方針も表明していました。主な柱はこちら。
チャート:バイデン氏の通商政策
注目は同盟国との対中包囲網を構築するプラン。ただし、それ以外は実効性に欠け、机上の空論に聞こえなくもない。一連の政策発表前に、JPモルガン・チェースが「対中追加関税の引き下げ」を予想したのも、むべなるかな。
現時点ではバイデン候補が圧倒的にリードしていますが、果たしてこのまま逃げきれるでしょうか。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2020年7月17日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。