トランプ大統領が学校再開をめぐり米疾病対策センター(CDC)や地方自治体などと揉めていますが、新学期セールはコロナ禍の陰気なムードを打破してくれるかもしれません。
全米小売業協会(NRF)によれば、小学生から大学生までの新学期セールは前年比25.9%増の1,016億ドルと史上初めて1,000億ドルを突破する見通しです。新学期セールと言えば、年末商戦に次ぐ小売の書入れ時ですから、”小売の終末”に直面するなかで明るいニュースを運んでくれました。
チャート:新学期セール、売上高と1人当たりの支出
ただし、学校の再開をめぐる不確実性を背景に7月前半までに新学期に備え買い物を終えたとの回答は17%に過ぎません。買い物をほとんど済ませていないと回答したうち、54%が「必要なものが分からない」状況だといいます。それというのも、学校側から新学期を前に買いそろえておくべきアイテムのリストが事前に配られるため、受け取っていなければ対応できないというわけです。つまり新学期セールは、7~8月にかけ小売売上高を細く長く押し上げる効果が期待できます。
逆にリストを受け取ったとの回答は10%にとどまり、40%が「今月末までに」、30%が「8月末までに」入手する見通しだといいます。いかに学校側が再開に二の足を踏んでいるかが分かると言うものです。
予想がつかないとはいえ、9月になれば否が応でも新学期がやってきます。というわけで、回答者のうち72%はコンピュータから家具に至るまで、リモート学習が続く場合の備えが必要だと回答していました。その結果、小中高生向けの品目別売上高はご覧の通り、服飾や靴などを含め全て前年を上回る伸びが見込まれただけでなく、コンピュータ・電気製品が突出して増加する見通しす。
チャート:品目別、売上高の推移と2020年見通しではコンピュータ・電気製品が突出して増加
IT関連の需要がいかに高まっているかは、鉱工業生産でも明らかです。6月分はコンピュータ・通信が前月比5.6%上昇し過去最大の伸びを記録しただけでなく、前年比でも2.0%上昇し3ヵ月ぶりにプラスに転じていました。コロナか直前の2月の水準まで、あとわずかに迫る勢いです。
チャート:鉱工業生産、品目別の推移
失業保険の拡充もあって、少なくとも夏いっぱいは新学期セールが個人消費を下支えしてくれそうです。今後は、トランプ政権と米議会が新たな刺激策を通過するかに掛かっています。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2020年7月20日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。