こんにちは、音喜多駿(参議院議員 / 東京都選出)です。
マンション不正購入疑惑で追い詰められている千代田区長が、なんと議会に対して「解散通知」を出したことが大きな波紋を広げています。
区議会が区長の刑事告発に向けた議案を可決。区長が議会の「解散通知」を議長に提出する異例の事態に。https://t.co/ot9eOQpni4
一方、区議全員が「解散通知」の無効を主張。真っ向から対立している。
— 産経ニュース (@Sankei_news) July 28, 2020
すでに多くの報道や有識者のコメントがなされている通り、内閣総理大臣の一存で解散できる国会と異なり、地方議会は「議会による不信任決議案のカウンター」でしか解散することは不可能です。
地方自治法第178条
普通地方公共団体の議会において、当該普通地方公共団体の長の不信任の議決をしたときは、直ちに議長からその旨を当該普通地方公共団体の長に通知しなければならない。この場合においては、普通地方公共団体の長は、その通知を受けた日から十日以内に議会を解散することができる
ただ実はもう一つ、議会がある特定の経費(予算)を認めずさらに再議も否決した場合、首長はそれを不信任の議決とみなすことができるという規定(第177条)がありますが、佐藤篤墨田区議が指摘するように、この議論・再議は千代田区議会で行われていません。
よって千代田区長が主張する「刑事告発を事実上の不信任案とみなした」というのは非常に勝手な自己流の解釈に過ぎず、議会側が主張するように法的根拠はないと解釈するのが常識的判断です。
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実際に解散・選挙が行われるかどうか、次は千代田区選挙管理委員会が判断する模様ですが、仮にこれが受け入れられてしまうと議会制民主主義・二元代表制を破壊する悪しき前例となりかねません。
地方自治体の長には、緊急時などには議会を通さずに議決を行える「専決処分」という強い権限があり、さらにその上で議会を「事実上の不信任」なるロジックで勝手に解散させる権限まで与えてしまえば、首長側の権力があまりにも強くなりすぎるのではないでしょうか。
実際、千代田区長は議会が機能停止をしている間、千代田区民に現金12万円を給付する予算を専決処分で行う意向を示しており、文字通りの「独裁・やりたい放題」がまかり通ることになります。
こうした千代田区長の姿からは、市長が専決処分を連発して全国的に物議を醸し出した阿久根市の事例が思い出されます。阿久根市では最終的にリコールが成立して市長は失職しました。
阿久根市長が失職 リコール成立、1月にも出直し選(2010年12月)
地方公共団体におけるリコール投票は、有権者の3分の1以上の署名で成立します。
「有権者の3分の1」というのは極めて高いハードルではありますが、人口約6万人の千代田区であれば成立の見込みはゼロではありません。
千代田区長が当初どこまで考えていたかはわかりませんが、住民に現金12万円を給付するバラまき施策は巧妙な「リコール潰し」なのではないかとすら思えてきます。
いずれにしても、千代田区長自身の不祥事に端を発した問題によって、コロナ禍で議会の解散や住民投票が行われることは不利益しかなく、千代田区選挙管理委員会や千代田区長には賢明な判断を望みたいと思います。
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最後に改めて。
私は前回の区長選挙の際、現職区長の再選を支持して応援しました。その判断は結果として間違いであったと言わざるを得ず、慚愧に堪えません。
その責任を痛感しており、深くお詫びを申し上げます。
千代田区長におかれては、区政にこれ以上の混乱を招くことなく自ら出処進退を決めていただくことを要望し、千代田区政の展開に引き続き注視をして参ります。
それでは、また明日。
編集部より:この記事は、参議院議員、音喜多駿氏(東京選挙区、日本維新の会)のブログ2020年7月28日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。