景気刺激策2.0、共和党と民主党の主な争点とは?

カバー写真:Thomas Hawk/Flickr

景気刺激策2.0をめぐり、共和党と民主党の対立が激化しています。

失業保険の上乗せ600ドルが期限切れを迎え、景気刺激策2.0の成立は少なくとも約1,700万人の失業者にとって死活問題となっています。しかし、その失業保険の上乗せ額だけでも共和党のHEALS法案は200ドルへの減額(9月末まで200ドル支給、以降は年末まで州の失業保険と合わせコロナ前の給与の70%支給)、民主党案のHEROES法案は引き続き600ドルと、大きな差が生じています。その他の主な問題点は現金支給額で、両者の違いは以下の通りです。

〇HEALS法案⇒約1兆ドル

  • 単身で年収7.5万ドル以下の中低所得者層1人当たり1,200ドル支給(それ以上は段階的に削減し9.9万ドルでゼロに)、被扶養者1人当たり500ドル支給(年齢制限設けず)
  • 2020年1月以前に死亡した米国人、現金支給の手続きを行う期間の囚人は対象外
  • 債権回収者の現金支給差し押さえを禁止

〇HEROES法案(5月に下院で可決済み)⇒約3兆ドル

  • 単身で年収7.5万ドル以下の中低所得者層に1,200ドル支給(それ以上は段階的に削減し9.9万ドルでゼロに)、24歳以下の被扶養者には3人まで1人当たり1,200ドル支給(例:夫婦2人、3人の子供の場合は6,000ドル)
  • 債権回収者の現金支給差し押さえ、並びに内国歳入庁(IRS)に養育費未支払い分の小切手利用を禁止
  • ITIN保有者は現金支給の対象に

――念の為、追記すると景気刺激策1.0は以下の通りでした。

景気刺激策(CARES法)⇒約2.2兆ドル(成立当時、その後修正を経て増額)

  • 単身で年収7.5万ドル以下の中低所得者層に1,200ドル支給(それ以上は段階的に削減し9.9万ドルでゼロに)、被扶養者は17歳以下まで(詳細はこちらをご参照)
  • 個人用納税者番号(ITIN)保有者つまり社会保障番号を有していない者、不法移民、I社会保障番号を保持しつつもITINで夫婦として納税する者などは対象外

画像:3月成立の景気刺激策には、トランプ大統領の署名が入りましたが今回はいかに?

アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所(AEI)の試算では、景気刺激策1.0での平均現金支給額は1,729ドルでした。民主党案が成立すれば、2,170ドルに増額される見通しです。AEIは共和党のHEALS法案については具体的な予測値を提示しませんでしたが、民主党以下に収まると指摘しています。

個人的に驚いたのは、共和党案に盛り込まれた「2020年1月に死亡した米国人は現金支給の対象外」です。なんと3月成立の景気刺激策では、110万枚以上の小切手を死亡者に支給し総額約10億ドルがまさに”死に金”となりました。さて今回はどんな内容となるのか、大統領選を控えた両党のせめぎ合いは投票に影響すること必至です。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2020年8月2日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。