小泉進次郎環境大臣のところに、株式会社ワーク・ライフ・バランスの小室淑恵さんと一緒に行ってきました。
小泉さんと環境省の若手の皆さんと、省庁の働き方改革について意見交換するためです。
1.コロナ禍でも変わらない霞が関/環境省がトップ
8月4日、株式会社ワーク・ライフ・バランスが、コロナ禍の官僚達の働き方がどう変わったのか、web上で国家公務員にアンケートをした結果をまとめて発表しました。(社長の小室さんは同い年の友人でこのアンケートもアドバイスをさせていただきました)
その内容は、下のハフィントンポストの記事に分かりやすくまとめられていますが、以下のような状況が明らかになりました。
① 残業が極めて多かった(コロナの主担当なので仕方ない面がありますが特に厚労省)
② 対面でのコミュニケーションが変わらない
③ テレワークがなかなか進まない
なかなか変わらない霞が関の働き方ですが、そんな中でも環境省が2冠に輝きました。
【元ネタの株式会社ワーク・ライフ・バランスのプレスリリース】
2.なぜ、霞が関の働き方はコロナ禍でも働き方が変わらないのか
テレワークやコミュニケーションのオンライン化が進まない理由はなんでしょうか。
これは簡単な話でコミュニケーションのやり方というのは、合理的かどうかという要素もありますが、目上の人に合わせるのが通常だからです。これは、役所でも民間企業でも同じです。
ただ、霞が関や永田町の方が、「目上の人に合わせる常識」が強いと思います。
官僚組織はピラミッド型の大組織ですし、永田町は霞が関以上に縦社会です。
だから、霞が関でも若手は時代に合ったやり方にかえてほしいと思ってもいても、各省とも若手チームが色々な改革の提言をしていますが、トップが強い意思で変えることを決定しないと変わりません。
大臣レクのオンライン化やテレワークの導入も省庁間で大きな差があります。
環境省がいずれも1位になりましたが、これは環境省の若手が取り組みはじめていたところ、小泉さんが自分自身も相当テレワークをしたり、事務次官や局長などの幹部にもテレワークを指示したことが大きな要因です。
組織の構造として、一番仕事のやり方を変えるのにハードルがあるのはベテラン職員です。
若手のうちは、仕事を覚える過程ですし、上から変えろと言われたら変えるのは当たり前と思っていますし、変わることにそれほどハードルは高くありません。
でも、20年、30年同じやり方をしてきた年輩の人が急にやり方を変えるのは、かなり大変なのです。
実際には、やってしまえば慣れるものなのですが。
一つの省でできることは、他の省でもできるはずなので、ぜひ他の省でも取り組んでいただきたいと思います。
3.環境省の若手チームとの意見交換
実は、同じ8月4日に環境省は「選択と集中」という改革の方針を公表しています。政策の選択と集中と組織改革・働き方改革をセットで進めるものです。
【環境省の発表資料】
若手を中心とした3つのプロジェクトチームで検討したものですが、若手の提言ではなく、大臣まで意思決定した環境省の方針として公表したそうです。
よくあるパターンは、若手に自由に議論して大事に提言して、それを大臣が幹部に検討させるやり方ですが、これだと若手があるべき姿を提言しても、どうしても変えられることだけ少しずつやろうということになりがちです。
こういうやり方も小泉さん流なのかもしれません。
僕は、3つのプロジェクトチームのうち、働き方改革協力チームの皆さんと1ヶ月くらい前に意見交換をさせていただきました。
そこで、すごく印象に残ったのは、環境省の若手の皆さんが「本当に仕事がやりやすくなった、風通しがよくなった、若手の意見も聴いてくれる、総じて楽しくなった」と口々に言っていることでした。
そして、たまたま改革に積極的な大臣がいたから進んだけど、大臣が変ったら後戻りするのではないかという懸念も聞きました。
そういうことなら、応援したいと僕も思ったわけです。
若手が生き生きと働けるなら、組織のパワーは上がり、必ず政策能力も上がるからです。
僕からは、
■ 「官僚の働き方改革」は、官僚の生活環境をよくすることが主たる目的になっては、社会的に意味がないし、改革自体が進まない。
■ 改革を進めた結果、政策がよくなるのか、国民にとってプラスなのかという視点を常に意識してほしい。
■ 多くの一般の人が改革の必要性を理解して応援できるようなものにして、発信してほしい。
ということを伝えつつ、具体的なアドバイスをしてきました。
4.環境省の改革の価値
その後の大変な調整過程があったと思いますが、
発表された環境省の「選択と集中」を見て、率直に「いいな」と思いました。
それは、単なる省内の業務改善・働き方改革ではなく、新しい時代と未来に対応するための政策を作るための仕事のやり方を変えるものになっているところです。
特に以下の点です。
■20%ルール
所属する課の所掌(守備範囲)からはみ出すことでも環境省に関係することなら就業時間の20%使うことを認めるというものです。
課の所掌というのは、その課が出来た時代の最適な切り口で決められているので、今の霞が関には1つの課で解決できない、もっというと1つの省だけで、官庁だけで解決できない課題だらけなので、絶対に必要な取組と思います。
■未来のあるべき姿を見据えている
脱炭素社会・循環経済・分散型社会への「3つの移行」
■新しいことに取り組むために、本来の政策立案に使える時間を捻出
①既存事業の見直し
②デジタル化・アウトソーシングで業務削減
③国会答弁システムの導入で業務時間短縮を検討
④ 連絡係を廃止して情報伝達をフラットにして、その分政策の中身を考える人を増やす。
5.改革が打ち上げ花火で終わらないために
意見交換では、この方針を後戻りさせないためにどうしたらよいかという話になりました。
私からは、今の大臣のうちに20%ルールを適用する職員の実例を何人か作った方がよい、そして、その人がいかに政策的に意議のある活動ができたかを発信すべきという話をさせていただきました。
実例を作る過程で、組織内の調整の前例や細かいルールができあがるので、次の対象者を生み出す流れが組織にできるからです。
また、単なる面白い取組ということではなく、社会にも組織にもプラスになる活動にして、発信することにより、もっと増やそうという流れができるからです。
今後の環境省の取組に引き続き注目してきたいと思いますし、他の省庁でも取組を進められるよう、応援していきたいと思います。
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編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2020年8月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。