政府、海自隊員2000人以上増員へ ミサイル防衛など要員確保(毎日新聞)
政府は弾道ミサイル防衛などに当たる人員を確保するため、海上自衛隊の自衛官を2000人以上増員する方針を固めた。陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」配備断念を受け、海自の体制強化が必要と判断した。現在の採用の仕組みを見直し、早ければ2021年度当初予算案で人件費を増額させ、現在約4万3000人の海上自衛官を数年かけて約4万5000人以上に増やす。
実際の定員から一定数を減らした人数の分だけ人件費を確保する「充足率」を廃止する。充足率は1950~60年代に自衛官の募集が難航し、定員を埋められず予算を返上するケースが相次いだため導入したが、安全保障上必要な装備・人数から算出した定員が有名無実化するとの批判も出ていた。今年3月の海自の定員は4万5356人だが、20年度当初予算ベースで人件費を確保したのは93・71%分だった。政府は充足率を廃止することで実際の定員まで採用する仕組みに見直す。
とまあ、この時期のこの手の新聞記事って当局の思惑ありの、観測気球が多いのでそのまま鵜呑みはできません。
問題は海自純増で、自衛隊全体の人員を増やすのか。あるいはアショアやらないから陸自減らしてもいいよね?という話なのか、です。
それからアショアやめてイージス艦増やすから純増ですというのはあまりにも短絡的です。増員するにしても、旧式艦やFFM、警備艦を減らす。あるいは不要な部署の人員を乗組員に回す、海上哨戒はUAVを多用するなどの努力、工夫をすべきです。
それに海自はいままで戦闘艦だって十分な乗員を確保できかった、あるいは高価な玩具を買うほうに予算を回してきたわけです。護衛艦に定員に入っている医官も殆ど乗っていない。乗員をフルに乗せて戦えるフネを揃えるよりも高いおもちゃ揃えてニヤニヤしている方を選択してきました。
そもそも船乗りがそんなに集まるのか?
という問題があります。今でさえもリクルートに苦労しているわけです。
辛い船乗りになろうという奇特な若者はそう多くはありません。
その上陰湿ないじめ体質です。それなりの階級の幹部ですら、いじめで自殺に追い込まれ、
それを海自は組織的に隠蔽してきました。そのような陰湿な組織に娘、息子を殺される可能性あるわけで親御さんが歓迎はしないでしょう。
まずはこのような陰湿な閉鎖体質を改めることが必要です。
また、2クルー制度の本格的な導入です。そのために2組のクルーが必要ですが、それを満たすためには増員は2000人では済まないでしょう。
まずは、先述のような旧式艦やFFM、警備艦を減らして、その人員をイージス艦などに集約する。それから陸自から転籍させて、基地警備などを担当させて、浮いた人員を艦艇にまわす。女性自衛官の職務拡大。航海手当などの船乗りの手当の拡充。
陸自の人員をバッサリ減らして、その分海自の人員を増やす。
それから幹部含めて予備役を充実させるように予備自衛官の制度を抜本的に改革する。
不要な国産装備の調達をやめて人件費を捻出する。哨戒ヘリなんぞ全部海外製にすればよろしい。国内メーカーには整備やインテグレーションだけをやらせればいい。調達コストやLCCは半額になります。あとコンピューターやジャイロなど他国の製品の方が安くて高性能で、メンテ楽なものは外国製に切り替える。
思い切った方策を取らないと、絵に描いた餅になるでしょう。
■本日の市ヶ谷の噂■
防衛装備庁の武田博史長官続投で、防衛産業からは嘆息が多数、との噂。
以下の記事をJapan in Depthに寄稿しました。
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2020年8月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。