コロナ禍でネット売上高比率が急伸、勝ち組小売業の業績を押し上げ

安田 佐和子

カバー写真:Mike Mozart/Flickr

コロナ禍で経済活動が一時停止した結果、小売業者の間で劇的な変化が起こっていました。

米国勢調査局によれば、ネット小売売上高は前期比31.8%増の2,115億ドルとなりました。ネット比率は4~6月期に16.1%と、前期の11.8%を超え統計開始以来で最高を記録しています。

チャート:小売売上高のネット比率

作成:My Big Apple NY

紳士服大手ブルックス・ブラザーズを始め服飾など、小売業者は7月末までに少なくとも43社が破産申請を余儀なくされましたが、ネットへの移行が進んでいなかった企業の淘汰が進むはずです。そもそも、コロナ前の2019年後半から「小売の終末(retail apocalypse)」として、店舗閉鎖など相次いでましたよね。

ここで思い出されるのが、アマゾンを始めとした決算ですよね。以下は主な業績内容で、パーセンテージは全て

〇アマゾン
・純利益 99%増の52億ドル、1株利益10.3ドル>市場予想は1株当たり1.46ドル
・売上高 40%増の889.1億ドル>市場予想は815.6億ドル

〇ウォルマート
・純利益 79.4%増の64.8億ドル、調整済み1株利益1.56ドル>市場予想は1.25ドル
・売上高 5.6%増の1,377億ドル>市場予想は1,356億ドル
・既存店売上高 9.3%増
・ネット売上高 97%増

〇ターゲット
・純利益 80.3%増の17億ドル、調整済み1株利益は3.38ドル>市場予想は1.63ドル
・売上高 24.7%増の228.9億ドル>市場予想は200億ドル
・既存店売上高(ネット含めた場合) 24.3%増>市場予想は7.6%増
・ネット売上高 195%増(カーブサイド・ピックアップは700%増)

ウォルマートとターゲットは、アマゾンに対抗し翌日配送のほか食料品の充実化を図り、且つ実店舗を有する利点を最大限に生かしカーブサイド・ピックアップを導入しています。ここが他の小売と違うポイントで、特にカーブサイド・ピックアップはターゲットがどこより早く全面的に手掛け2019年9月から全米で開始。数年前からウォルマートも食料品に限って2019年1月から本格始動していましたが、今年5月からは電化製品や服飾など非食料品へ広げたものです。競合で破産申請を行ったJCペニーがコロナ禍の今年3月、コールズが4月だったことと、対象的です。

こうしてみると、いかにネット戦略を早々に打ち出していたかが、運命の分かれ道だったことが分かります。ウォルマートやターゲットなどの勝ち組が今後もリードを維持できるのか、今後現れるライバルの戦略次第でしょう。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2020年9月3日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。