こんにちは、音喜多駿(参議院議員 / 東京都選出)です。
菅総裁候補が「不妊治療への保険適用」について言及したことが、かなり大きな波紋を広げています。まさか自民党の総裁選でこの政策が出てくるとは思っていなかったので、私自身もびっくりです。
菅氏「不妊治療に保険適用」 自民党総裁選演説会(9/8 日経新聞)
不妊治療への助成拡大・保険適用はどちらかと言えば左派・リベラルといわれる政党・政治家が熱心な政策で、ある意味で「自民党っぽくない」政策の一つです。
私は積極的に進めていく立場の人間ですが、これまで進んでこなかったのは当然に賛否両論や課題があるからなわけで、改めてそれらの点をまとめておきたいと思います。
- 参考過去記事:
「産みたいけど産めない」人への支援をどうするか?-東京都の不妊治療助成-(2014年4月)
高度不妊治療に保険を適用、STOP日本の少子化!(PoliPoli)
不妊治療は現在「自由診療」で保険適用外となっており、高額治療については行政が一定の条件下で助成金を出している状態です。
もちろん財源が無限であれば保険適用ができるに越したことはありませんが、医療保険財政はすでに火の車。
医療保険というのはそもそも、誰もが意思に関係なくかかる可能性のある病気に対して、それぞれが保険料を負担して成り立っているものなので、一部の人しか必要としない治療にこれを適用することには「受益と負担」の観点から根強い反対意見があります。
加えて高齢になればなるほど、成功率が低くなる点もネックです。
命にかかわる治療ではなく、40歳を超えると成功率が1割を切る施術に対して、みんなが拠出している保険料をつぎ込んでいいの?という意見は当然に多く出てきます。
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こうした不妊治療に対する世界の対応はマチマチで、保険適用としているフランス・ドイツのような国もあれば、税方式や助成金で対応している国もあります。
それだけクリアな正解がない、難しい政策課題であるということでしょう。
最後は財源をどこにどう使うかという「決め」の問題であり、私は課題を踏まえて上でなお、少子化対策・将来世代への投資という観点から不妊治療は保険適用とすべきであると考えます。
ただそのためには、年齢や回数などで精緻な制度設計はもちろんのこと、そもそも高齢者負担も含めて改革が待ったなしである社会保険制度の抜本改革が必要不可欠です。
菅総理が誕生して不妊治療の保険適用が行われても、改革が先送りされるのであれば持続可能性や納得はありません。
その改革の推進力になれるのは、しがらみない立場から筋金入りで社会保障制度・社会保険制度の改革を訴えてきた我々しかいないでしょう。
総裁選の行方を注視しつつ、我々も政策提言を磨いてまいります。
それでは、また明日。
編集部より:この記事は、参議院議員、音喜多駿氏(東京選挙区、日本維新の会)のブログ2020年9月10日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。