貴金属と医療品の需要、コロナ禍の米国で拡大中

カバー写真:Bullion Vault/Flickr

米7月貿易収支は、こちらでご紹介した通り経済活動の再開に合わせ輸出入が増加しました。

その半面、コロナ禍で進む“非貨幣用金(日銀より:通貨当局が準備資産として保有する金(貨幣用金)、および金投資口座等にかかる金(投資用金)以外の全ての金(工業用あるいは価値保蔵用の金)“を始め、貴金属・宝飾品や芸術品など代替資産の輸入が引き続き大幅に増加しています。コロナ禍での不確実性を受け、投資家がヘッジしている様子が浮かび上がります。特に貴金属・宝飾品の輸入額は7月末までの年初来で前年分の輸入額を超えただけでなく、2016年以来の高水準となっているのですよ。輸入品目での順位は、2019年の10位から7月末時点で6位へ浮上しております。7月単月では、4位でした。

チャート:金、銀、プラチナ、真珠など貴金属・宝飾品の輸入額

作成:My Big Apple NY

国別の貿易赤字動向をみると、米国が前年比で赤字を拡大させる国はスイス、アイルランド、ベトナム、台湾、マレーシアの5ヵ国でした。ベトナム以下3カ国での赤字拡大は、米中貿易摩擦を背景に、輸入先を変更あるいは拠点をシフトした動きを一部表していると考えられます。

翻ってアイルランドとスイス、特にアイルランドで米製薬会社が節税目的で本拠地を移転した事情もあり、医療品での対米輸出が大きい。例えば、米国における医療品の貿易収支は7月に311億ドルと、品目別で5位で、国別では7月にアイルランドが1位、スイスが2位でした。医療品の貿易赤字の規模自体、2019年の8.1%から2020年の年初来で9.7%へ拡大している点も注目。トランプ政権は医薬品や医療機器の国内回帰を目指しますが、実現すれば貿易赤字小につながること必至です。

チャート:医薬品の貿易収支

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ベトナムと言えば、不織布マスクなど個人防護での存在感も強めます。ただし不織布マスクを始めPPE分野では中国依存度が引き続き圧倒的で、脱却への道のりはかなり険しいと言わざるを得ません。

チャート:不織布マスク関連の輸入国トップ3

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編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2020年9月11日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。