作成時間1分のトンデモ視察報告書、視察研修には「洗脳」の危険も

芦田 祐介

これまで、「視察報告書のオンライン公開で議員のレベルチェックを!」「宿泊ありきの『ハズレ視察』に税金投入は許されない」において同一議員によるあきれた視察報告書を紹介してきた。

このときは「中学生の社会見学の感想文レベル」と評したが、今回は別議員による「小学生の社会見学の感想文レベル」といえる視察報告書を発見したので紹介したい。

くだんの報告書は「事業建設常任委員会行政視察報告書」というファイルに綴じられていた。1ページ目は議会事務局が作成した委員会メンバーの一覧があった。2ページ目は下記写真のとおり同じく議会事務局が作成した視察日程表があった。

3ページ目からは委員長、副委員長、A委員、B委員、議長の順番で視察報告書が綴じられていた。写真右側のとおり作成者ごとにインデックスが貼られていた。

委員長、副委員長ともにきちんと報告書が作成されていた。ところが赤丸で囲ったA委員の視察報告書を開いたとき思わず目が点になった。それが下記写真の報告書である。

思わず絶句してしまった。先に紹介した議会事務局が作成した視察日程表をコピーして、その余白部分に乱雑な「報告文」が書かれていた。やっつけ感が半端ない。作成時間は1分というところか。これが視察報告書なのかどうかと目を疑ったが、ボカシをかけた「本文」とインデックス部分にはきちんとA委員の氏名がかかれていた。「視察報告書」として受理されているようである。

この視察報告書を作成したA議員は既に勇退しているが、当時は議長経験もある当選回数を重ねた重鎮議員であった。そのため委員長としても書き直しを求めることができなかったのかもしれない。

視察研修に潜む「洗脳」という危険性

議員の視察研修では会議室で役人から説明を受け、質疑応答を経て、実地視察をおこなうというケースが多い。役人が自ら視察対象となった事業の問題点や不都合な事実、住民からの不満の声に言及することはまずない。

つまり視察研修は「洗脳」される危険性が潜んでいるということだ。視察報告書を見ると「すばらしい事業であった」「町政(市政)に活かしていきたい」「大変勉強になった」などといった記載がよく見られるが、うまく「洗脳」されているのかもしれない。

視察訪問先として人気がある自治体の元市議が「うちの市に視察に来た人たちは見事に『洗脳』されて帰っていく」と言っていたことが私の印象に強く残っている。

去る10月12日に「大阪都構想」の賛否を問う住民投票が告示された。役所が実施する説明会に参加し、賛成派議員の説明ばかり聞いていれば賛成派に「洗脳」される恐れがある。逆に反対派の集会に参加し、反対派議員の説明ばかり聞いていれば反対派に「洗脳」される恐れがある。

「大阪都構想」に限らず、結論を先に決めず、さまざまな意見をよく聞いてものごとを判断することが重要である。