(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)
米国大統領選挙がついに終幕を迎えた。長く険しい戦いだった。私自身の長年の現地取材では、大統領選というのはマラソンとボクシングを組み合わせたような苛酷な闘争だと感じることがよくあった。候補者たちが長い距離を走りながら、互いに殴り合い、傷つけ合うからだ。
2020年の大統領選の戦いは、とくに熾烈だった。異常なほどと言ってもよい。新型コロナウイルスの大感染が米国全土を襲うという、かつてない環境下の選挙だったことに加え、ドナルド・トランプという型破りの現職大統領への民主党側の敵意に満ちた攻撃は尋常ではなかった。対抗するトランプ大統領も、自らがコロナウイルスに感染しながらも激しい反撃に出るという、これまた異様な展開だった。
無視できないトランプ陣営の抗議の動き
さてその選挙の投票から1週間が過ぎた11月10日現在、開票結果は公式には確定していない。
米国の主要メディアはバイデン氏の勝利を報じ、バイデン氏自身も全米に向けて勝利宣言の声明を出した。これまでの総得票数、各州の選挙人の獲得数のいずれもバイデン氏がトランプ大統領を上回っているのだから、「バイデン勝利」と報じられるのは自然の流れと言える。