コロナ死に占める高齢者数の速報を望む

中村 仁

新型コロナ感染者は27日、2530人になり、重症者は435人で過去最多となりました。菅首相が「札幌・大阪発のGoToの自粛」を呼びかけるなど、コロナ恐怖症が全国に広がっている模様です。

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コロナ感染で重視すべきなのは感染者数ではなく、重症者数であり、最終的には死者数になります。その死者数は31人(27日)で、累計で2095人になりました。東アジア諸国の死者も欧米と比べると、圧倒的に少ない。

欧米をみると、死者は米国26万人、英仏伊が各5万人です。コロナ感染では国際比較をして、日本の状況を冷静に把握することです。さらに今回、私が望みたいのは、日本の世代別の死者数の速報です。

70代以上が8割の意味

28日の朝刊をみると、朝日は「この1週間で全国で新たに1万4千人以上の陽性者、120人以上の死者が確認された。このペースが続くと、医療機関のベッドが埋まり、医療現場がひっ迫する」です。読売は「死者は北海道の9人を含め全国で31人」などで、全世代の合計しか書いていません。

昨晩のNHKのニュースも、死者数は報じているものの、世代別・年代別の内訳には触れていません。若い世代に比べ、死者が圧倒的に多い高齢者世代の死者数、その意味をメディアはどうして報道しないのか。

かろうじて日経が「直近1か月の死者の約6割を80代以上が占め、70代2割、60代が1割、50代以下は4%にとどまる」と、書いていました。80代は個人差があるので、90代のデータも知りたい。

死者が多い高齢者世代は、「自分たちは大丈夫だろうか」と、心配しているに違いないでしょう。「国内死者31人で最多に並ぶ」(朝日)と、書くなら年代別の内訳も紹介してほしい。政府はリアルタイムで数字を発表していないのでしょうか。

コロナ死の定義が自治体ごとにまちまちで、「報告されてくる数字を単純に合計しても、比較、分析できない」と言われたことがありました。まだ、定義が統一されていないのでしょうか。

「老衰死の高齢者でも、陽性者だと、コロナ死にカウントされてしまう」「ガンなどの重篤な疾病を持つ高齢者が死亡し、陽性者の場合もコロナ死になるのか」。本当の死因が精査できていないケースもあるというのなら、速報値で発表し、後から修正すればいい。

こんなことを考えるのは、「コロナ死には高齢者が多い。高齢者の本当の死因を特定したら、コロナ死者数は公表値より少ない可能性がある」ためでもあります。また「コロナに感染しなくても、高齢者は別の病気で亡くなっていたかもしれない」という指摘も聞きます。

19年の年間死亡者は138万人でした。60歳以上が占める比率は90%とか。その高齢者は免疫力が低下しているので、コロナに感染すると重篤化し、亡くなりやすい。「だから高齢者はコロナ感染しなくても、別の病気でなくなっていく」とまで短絡することは社会倫理的に許されません。

働き盛りの若い世代のコロナ死(50代以下は全体の5%)は少ない。「だからコロナ対策では、特に若い世代の職場を休業に追い込んだり、雇用を雇用を奪ったりしないようにすべきだ」という指摘も聞きます。

高齢者を安全圏に隔離して命を守りつつ、働く世代に多くの犠牲を求めることは避けるということです。そこがコロナ対策の難しさ、「経済を回しながら、感染拡大を抑止」の難しさです。

若い世代とっても、高齢世代にとっても、一人一人の生命は掛け替えのないものです。ですから「コロナ対策は、高齢者を守るために、若い世代に多くの負担を強いるものであってはならない」とまで、割り切ることはできないでしょう。

そうであっても、「コロナ死の8割が70代以上の高齢者」という意味をいろいろな視点から考えてみる必要はあります。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2020年11月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。