水虫薬に睡眠導入剤が混入?! 処方された患者の37%が健康被害

問題の睡眠薬イトラコナゾール50「MEEK」(小林化工HPより)

水虫薬に睡眠導入剤が混入していたという報道を目にした。読売新聞によると「患者364人を特定」、そのうち、「11日午前0時現在、133人が健康被害を訴え、入院したか救急搬送された患者は34人(退院者を含む)に上る。車を運転中に意識を失うなどして起きた物損事故も16件確認されている」とある。

報道を目にする限り、混入ではなく、原薬を取り違えたとしか思えない。一般的な錠剤は、薬になる成分(薬効成分)以外に溶けやすさや吸収されやすさを考慮した成分が含まれている。

新聞によると、薬効成分を追加する際に、睡眠導入剤が混入されたとあるが、混入された睡眠導入剤の量は、一般的に睡眠導入として服用する量を超えており、強烈な眠さに襲われても当然の量だ。

これまでに把握されているだけでも、処方された364名のうち、3人に一人以上で健康被害が出ており、10人に一人近くが救急搬送され、20人に一人くらいが運転中に事故を起こしている。そして、原因は確定されていないが、一人が亡くなっている。この状況は、注意を欠いた軽率な事故のレベルを超え、事件と呼んでもいいくらいの規模だ。

薬効成分となる原薬を取り違えることなどはあってはならないことであり、この企業のチェックシステムはどうなっているのだろうか?錠剤を作るすべての過程で厳重なチェックが必要なはずであり、二重、三重のチェックシステムがあってしかるべきだ。

もし、処方情報がマイナンバーカードや保険証に紐づけされていたなら、直ちに対応が可能となるはずだ。病院やクリニックで処方された薬を、価格の安いジェネリックで置き換えられることも日常的に起こっている。内閣府のプロジェクトでは、病名と処方薬が不一致の場合にそれを把握するシステムができないものかと考えているが、薬剤そのものにエラーが起こることは想定していなかった。

しかし、人間はあらゆるプロセスでミスを起こすものだ。今回の場合、社内での問題は厚生労働省が調査するだろうが、起こったミスを最小にするシステム設計が重要だ。マイナンバーと保険証だけでなく、処方薬の情報をリンクすることができていたら、処方された364人に直ちに連絡がとれ、被害を最小にできるはずだ。

言うまでもないが、健康被害の情報がリアルタイムで収集できれば、ここまで健康被害が広がる前に把握できたはずだ。

PS: 菅総理が、インターネット番組に出演し「ガースーです」と笑みを浮かべて自己紹介したことに非難が起こっている。コロナ感染症で、医療関係者が医療崩壊の危機を訴えている時に、何を考えているのだろうと思った人は多いはずだ。緊急事態宣言時の安倍総理のリラックス画像に匹敵する大スベリだ。テレビを見ていると、医療関係者の悲痛な叫びが連日伝えられているにもかかわらずだ。毎日新聞の世論調査では、不支持率49%と出ていた。むべなるかな。


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2020年12月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。