日本民主主義再構築論④ 再構築の道筋

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「日本民主主義再構築論」と題した過去3回の原稿では、近年世界的な潮流となっている「民主主義の危機」を概観し、その中にあって日本が取り得る道は「民主主義の深化」のみであることを述べてきた。他方、「民主主義の深化」に必要不可欠な「国民の政治参加」が進まない現状と、それを阻害する要因を「国民、政治家、行政」の心的、功利的観点で確認した。

最終稿となる本稿では、上記を踏まえ、日本の政治が「納得感を得るための手段」に再構築されるための道筋を探る。

危機の共有

まずは、これまで見てきた「民主主義の危機」が、足元まで迫ってきていることを国民的な重要課題として認識する必要がある。戦前、戦中の記憶を持つ国民が世を去りつつある現代の日本において、「民主主義の崩壊」はイメージしづらいかもしれない。しかし、隣国の中国が香港の民主的独自性を蹂躙していく姿を、私達は今日もリアルタイムで目にしている。また、中国からの絶え間ない恫喝と世論操作にさらされながら、台湾は最大の危機意識をもって全体主義国家と対峙している。

さらに、これまで日本が「頼りにしていた」アメリカという後ろ盾も、かの国の世界的影響力の後退と孤立主義への振れ幅がどこまでのものであるのか予測がつかない以上、恒久前提として考えるのは危険だ。「アメリカの傘の下」という枕詞が、日本を修辞していた雅でのんびりした時代は過去のものであり、これからは「現実的なパートナー」としてアメリカをとらえるべきだ。

加えて、政治への信頼が極端に低いという内憂を抱えている日本は、海外からの悪意をもった情報操作などにより政治体制を操作され、ゆがめられる隙のある状態でもある。

このように、内と外とに大きな危険要素をはらむ政治環境にある日本は、すでに民主主義を維持することすら、相当な努力を払わねばならない時代に突入したという認識を早急に共有しなければならない。

繰り返すが、政治を信頼できるものに再構築することは日本の喫緊の重要課題であり、もはや小手先の政治改革や、通り一遍の民主主義の啓発でお茶を濁すことができる時期ではないのだ。

比較政治学的研究とアクション

これまでの原稿でみてきたとおり、「民主主義を再構築」するための近道はない。しかし、スウェーデンをはじめとする「政治が国民の信頼を勝ち得ている民主主義国家」は、世界に複数存在する。それらの国が、どのような経緯と方法で「足腰の強い民主主義」を獲得していったのか。また、それらの国が現状抱えている課題や中長期予想される将来像などを、つぶさに調査研究する必要がある。

政治が決断すれば、ここまでは行政で実施可能だ。

しかしここで問題になるのは、その結果を分析し、実施計画を策定し、速やかに政策反映させるための「政治の信頼を向上させる役割を担う行政機関」が存在しないという事実だ。理由は簡単で、行政が政治に対して改革を促すというベクトルを持つ業務など存在しえないからだ。そのようなタスクを持つ行政組織が存在しない以上、「政治の信頼」に関して責任を負う組織は「政党」となり、従って話はいつになっても前に進まない。

この「誰も手をつけられない穴」を埋めるには、ここまでで述べてきたような危機意識を持つ議員たちが、政治の信頼を向上させるという文脈で「民主主義の深化」を測る超党派の議員連盟を組むことが必要だろう。

それが実現できれば、結果的には国会運営、教育制度、広報の在り方改革、選挙制度等に関するWGを持つ、大きな組織となるだろう。

実現の可能性は極めて低いが、私達は政治をその方向に振り向けるよう、国民的議論を展開し、粘り強く声を上げ続ける必要がある。アゴラなどの言論媒体は、その文脈において今後より重要な役割を果たすことになるはずだ。

行政や政治の役割の外側にあるのが、私が最重要と考える「国民の政治参加」推進の方策と実施だ。「国民の」という以上、行政や政治からのお仕着せの政治参加プログラムでは持続可能ではない。国民が危機感を共有し、自覚と覚悟をもって政治に向き合ってはじめて、「政治に対する信頼」は実現される。

まずは、選挙で投票することからでもいい。あるいは、あなたが住んでいる地元の課題を解決しようとする団体を調べてみるだけでも、大きな一歩となるだろう。子どもの貧困、独居老人問題、環境保全など、興味のあるプログラムの情報を調べてみると、それらが政治と地続きであることが肌感覚でわかるはずだ。

時間的余裕はない

以上、私が考える「日本の民主主義の深化」のための道筋を、駆け足で述べてきた。

舌足らずな個所は多々あるし、教育やメディア論、私が議員として活動している地方政治の「再構築」について等、俎上に載せるべき議題はたくさんあるが、ここまでとする。

いずれにしても、「日本の民主主義の深化」は、待ったなしの状態だ。市議会議員一人ができることは限られているが、私が議員でいるうちの行動指針は、およそ以上のような認識のもとにたてていく所存だ。

このような方向性に共感し、行動する方が増えていくことを祈念しつつ、本稿を終えたい。