Twitterにだまされるな!トレンド欄は民意を反映しない

2021年01月27日 06:00

筆者はフリーの社会学研究者としていくつかの受託案件を取り扱っているが、それだけでは飯の種に困る。そのため、兼業の一つとしてECサイトでの模型販売(具体的には雑居ビルや集合住宅などのプラモデル販売)をやっている。

alexsl/iStock

模型を売るにあたってはSNSの利用が不可欠であり、筆者もTwitterに宣伝用アカウントを持っている。画面右側の「今何が話題になっているか」を示すトレンド欄には、テレビ番組の感想から芸能関係の話題、さらには現在開かれている通常国会や新型コロナウイルスの感染者数といった政治・社会の動向など様々なトピックが並んでいる。

そのトレンド欄の中に政治的主張、例えば「#菅義偉に殺される」、「#二回目の現金一律給付を求めます」といった文言を乗せたハッシュタグが並ぶことがある。ここで例示したのは左派的な主張だが、右派も「#拉致被害者全員奪還」といった主張を行っている。こういうハッシュタグがトレンド欄に並ぶことで、今の日本ではハッシュタグで示されたことが話題になっていると認識する人もいるかもしれない。

しかしこれらのハッシュタグ、もっというならTwitterのトレンド欄も、世の中の人々の意識を反映したものとはいえないと考える。理由は三つある。

一つ目は、Twitter利用者の偏りである。総務省が行っている「通信利用動向調査」によると、2019年時点でTwitterを含むSNSを利用しているのは国民の6割弱で、12歳以下と60歳以上での利用率が低いという。加えてTwitterの場合、13歳未満のアカウント登録を一律に禁止している。これらのことから、建前上は12歳以下の小学生の意識は反映されなず、60代以上の高齢者の意識も反映されにくいといえる。

4割の人々がSNSを利用していないことや、世論調査のように少数のサンプルだけを掬い上げるている可能性が高いことから、大衆全体の意識とはどうしても乖離したものになるといえる。

二つ目は、Twitter利用者の中でも、特定の話題に触れるアカウントが限られてくることである。これは政治・社会の動向に限ったものではなく、芸能関係やテレビ番組の感想など全体にいえる。Twitterでは何を書くかについては個々人の裁量に任されている。そのため、特定の話題以外書かない人も大勢おり、逆に特定の話題について書かない人も大勢いる。それを分けるのが特定の話題についての興味関心である。

そしてトレンド欄には「何について発言したか」は反映されても「何について発言していないか」は反映されにくい。つまり、世間の大半の人にとっては取るに足らないような話題であっても、Twitterで発言する人が多ければ、それがトレンドとして反映されるのである。

その例としては深夜アニメや土日朝に放送される乳幼児向けアニメ・特撮に関する話題が頻繁にトレンド入りすることがあげられる。これらの番組の視聴率はNHKニュースやゴールデンタイムのテレビドラマやバラエティなどの番組と比べるとかなり低い水準である(なおこの場合、録画視聴率や視聴質は考慮しない)。しかしこれらの番組に関する話題がTwitterでは頻繁にトレンド入りすることを考えると、いかにTwitterのトレンドが世の中の人の意識を反映していないかが分かる。

三つ目は、アストロターフィング(偽装草の根運動)の可能性が捨てきれないことである。インターネット、特にSNSにおける政治運動を遂行するため、政党や政治団体がSNSなどで広報活動を行ってくれる人を募ることがある。例えば政権与党の自民党はネットサポーターズクラブという組織を擁しており、自民党の意に沿う情報をSNS上で拡散する人が所属している。所属する政党や政治団体を明かしたうえで、SNS上で所属する政党や政治団体にとって都合の良い情報を発信する人も多く存在する。

しかし中には、政党や政治団体に所属していながらその情報を明かさず、無関係な第三者を装って意図的に都合のいい情報を拡散する人が存在する可能性もある。特にTwitterの場合、Facebookと異なりハンドルネームでも登録可能である。そのため、特定の政党や政治的組織に属する人間が名前や所属を伏せ、インターネット上で所属する組織の都合がいい情報を、あたかも利害関係のない第三者を装って流すことも可能である。

こういった、草の根運動に見えて実際は特定の組織の意向が作用しているアストロターフィング(偽装草の根運動)に関係するアカウントがどの程度存在するのかについては、残念ながら知るすべはない。しかし、特にTwitterにおいてはそういうリスクが強いことは留意するべきである。

Twitterのトレンド欄を見て「今世の中ではこのようなことが話題になっているのか」と感じる人もいるかもしれない。しかしそのトレンドは世間一般の民意を反映したものとはいえず、多分にバイアスがかかったものであることは忘れてはいけない。そして政治的事柄や主張がトレンドに入っていても、それが民意を反映しているとは思わないほうがいい。Twitterは便利なSNSだが、同時にリテラシーが試される場であることは肝銘すべきだ。

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