アフターコロナの鉄道イノベーション③鉄道イノベーション実現の条件 --- 阿部 等 ---

2021年02月08日 06:00

アフターコロナの鉄道イノベーション①鉄道が持つ高い能力」と「アフターコロナの鉄道イノベーション② 具体的な鉄道イノベーション策 」で提案した有人自動運転、中速新幹線、貨物新幹線、寝台新幹線、満員電車解消、地方鉄道の高頻度化・多駅化のいずれも、実現できたら素晴らしい。アフターコロナに求められる国内回帰と大都市集中緩和に大きく貢献できる。

しかし、実現には多額の費用を要する。最終回の今回は、その実現の条件を考察する。

鉄道はアフターコロナに大きく貢献できる (MarsYu/iStock)

実現は鉄道会社の経営が成立つことが絶対条件

筆者は「鉄道各社は社会貢献のために採算度外視で実行すべき」などと言うつもりは毛頭ない。ましてやコロナにより全社が経営悪化している中、実現は経営が成立つことが絶対条件である。

提案した6つを順に見ていこう。コロナにより鉄道業界が意気消沈し、打つ手なしと諦めムードになっている中、皆で知恵と勇気を出す具体的な取組みとなることを強く願っており、筆者自身も汗をかく覚悟だ。

有人自動運転

自動運転と言うと自動車を思い浮かべるが、自動車より鉄道の方が自動運転の実用化・社会実装のハードルが低いことは明白だろう。鉄道は道路より閉鎖空間であると同時に、進路はレールと車輪で誘導される。“無人”でなく“有人”とすることで、さらにハードルを下げられる。

全ての鉄道が待たずに乗れるようになり、明治以来の先人達が遺してくれた鉄道インフラを有効活用できるメリットは計り知れない。

国が研究開発に先行投資する価値は極めて高く、思い切った予算を付ることで、自動車の自動運転に関わるものも含めて英知が一気に集まり、短期で実用化・社会実装できると想像する。

中速新幹線

昭和40年代に計画策定された全国新幹線ネットワークの内、約2,600kmが開業し、中央リニアを除き約3,600kmが未開業である。今の建設ペースでは全線開業は2140年以降となる。

全国新幹線ネットワークの開業済みと未開業の区間

それを中速新幹線に改めることで、場合によっては2040年代中に全線開業できる。整備新幹線と同様に国費投入と沿線自治体負担を前提とし、JR各社の経営にもプラスになる。

貨物新幹線

青函トンネルは、低速の貨物列車のために新幹線が低速かつ(途中で追付かないよう)低頻度となっている。その解決のためにも、日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)は第二青函トンネル(津軽海峡トンネル)の建設を提案している。アクセス道路整備と在来線接続の工事費を併せて1兆円以上を要する

貨物の新幹線化は、青函トンネルの旅客と貨物の速度差をなくして旅客新幹線を高速かつ高頻度とできると同時に、全国的に貨物列車の速達性と強靭性を大幅に向上できる。費用対効果は津軽海峡トンネルより高いと予想する。

寝台新幹線

地上設備への投資は年間売上げと比べてわずかで、線路保守への影響は極めて小さく、経費の大半は車両の開発・製造である。アフターコロナに都市間移動が8割くらいに回復した後は、ビジネスとして成立すると思えてならない。

満員電車解消

着席は立席と比べて高サービスかつ生産コスト大であり、経済原則からは値段差を付けるべきである。コロナによる鉄道会社の経営悪化は利用者にも社会にもよく知られており、着席割増料金の導入が受入れられる環境になったのではないだろうか。

首都圏の鉄道売上げは年間3兆円、平均単価200円であり、例えば4人に1人が着席割増料金を320円払うのみで平均単価が80円=40%向上し1.2兆円の増収となる。5方策の実行資金を充分に賄え、かつコロナで痛んだ鉄道各社の経営を回復させよう。

着席割増料金を確実に課金(『満員電車がなくなる日』より)

地方鉄道の高頻度化・多駅化

利用者が5倍となる上に、着席と立席の値段差、さらに新駅割増を導入すれば平均単価を向上でき、売上げは10倍近くにもなろう。好循環が続けば、さらに利用増・増収になろう。

1新駅10億円といった巨額を要しないよう、必要最小限の設備とし、また地元自治体の一定の負担により、鉄道会社の経営が成立つ可能性は充分にあろう。

阿部 等 東京大学 工学部 都市工学科卒。JR東日本に17年間勤務して鉄道事業の実務と研究開発に従事した後、交通問題の解決をミッションに(株)ライトレールを創業して16年。交通や鉄道に関わるコンサルティングに従事し、近年は鉄道の様々な解説にてメディアにしばしば登場。

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