ワクチン接種を縦割り打破の突破口に!

太田 房江

新型コロナの国民へのワクチン接種実施へ正念場を迎えようとしています。

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皆様もご存知の通り、まず2月下旬をめどに先行接種に同意された医療従事者1万人を対象に実施。体調、副反応の結果などを見極めながら3月中旬をめどに医療従事者を中心に300万人に接種。下旬ごろに65歳以上の3600万人、4月以降に基礎疾患ある方を優先的に接種していく計画です。

世界各国で争奪戦になっているワクチンの確保自体も難題ですが、そこを乗り切っても、短期間で前例にない規模での接種です。懸念なのは行政の「縦割り」問題。すぐに思いつくだけでも、ワクチンの「確保」は厚労省、「輸送」は国交省、「人員」は総務省が所管していて、さらには接種場所が学校の体育館となれば文科省も…といった具合に多数の省庁を巻き込みます。もちろん、国と、最前線に立つ市町村など地方自治体との連携も課題です。

縦割り突破の最大の武器は、デジタルの徹底活用です。国と自治体の連携に関して言えば、住民の接種情報の管理をどうするか、当初は国と自治体の足並みがそろわず、一部の自治体が先行して開発に乗り出す動きもあったようです。

しかし「V-SYS(ワクチン接種円滑化システム)」の導入が決まりました。ワクチンの割当量を調整し、卸業者がその量に基づいて医療機関にワクチンを配送。そして医療機関から接種実績やワクチンの在庫量を報告するなど、データをクラウドに集約。国民の皆さまにもその流れが把握できるようにするものです。

さらに私が提言したいのはAIの活用です。我が国が誇る世界一のスーパーコンピューター「富嶽」はコロナ禍でも飛沫の飛散シミュレーションに活用されて注目されました。この能力をワクチン接種にも応用できないか、もっとも効率的な輸送ルート、在庫調整などなど人間の計算よりも正確に早く割り出せるわけですから、すぐには無理でもAIをV-SYSに紐づける発想をもって検討したいところです。

そして、あまり指摘される方がおりませんが、米ファイザー社製ワクチンは保管・運搬にマイナス75度の冷蔵が必要であるように、接種のフローには電力供給の安定が何よりも求められます。先ごろの寒波・大雪で、全国的に電力供給が逼迫しました。

これから温かくなるとはいえ、3月でも大雪に見舞われることはありますし、夏の暑さが近づけば今度は冷房需要が高まる。そして、何よりデジタルを支えるのは電気なのです。電力会社のご尽力はもちろんのこと、電気を使う私たちも一人一人が節電で支えていく意識がいっそう求められる局面ではないでしょうか。

そういう意味では、ワクチン接種は国民も含めた「総力戦」といえます。

縦割り打破は決して簡単なことではりません。また、自治体との連携も財源を確保してはじめて成り立つもので、現在も国と自治体との間で調整が続いています。しかし、デジタル化も含めて、ワクチンの国民への大規模接種を成功させ、アフターコロナの経済再生へ歩み出すことができれば、日本の行政や社会に大きな成功体験となります。少なくとも私はそう信じて引き続き国政の場で問題提起し、現場を後押ししてまいりたいと思います。