接待費の割り勘分は省庁が補填するのが正解

政治の下働きで官僚は骨折り損

東北新社(放送事業)に続いて、NTT(通信事業)社長による総務省幹部に対する接待攻勢が国会で追及されています。民間企業には営業活動のための接待費もあるし、経費として認められるのに、官庁側には「会食費」という名目の予算がないのはおかしいと思う。

総務省YouTubeより:編集部

結論から先に申し上げますと、官庁側にも「会議費、会食費」などの名目で予算を認め、民間からも正確な情報を吸い上げる場を認めることが必要だと思います。

東北新社の社長に続いて、NTT社長の首も危ういかもしれません。官庁側にも「会議費、会食費」を認め、公務員倫理に反しない接触が行われていれば、不祥事に発展しなかったはです。

電波利権、電波行政に菅首相が影響力を行使しています。官邸に人事権を握られている総務官僚がその下働きに走る。カネのない官僚は放送、電波事業者の接待を受け、公務員倫理規程に反したとして更迭される。ばかばかしい話です。

政治家(族議員を含む)や政党と民間事業者のチャネルばかりが太くなるのを防ぐことは、バランスのとれた政策の回復に有益です。「政治と経済・産業界」のチャネルが太る一方で、「官民」のチャネルが細まっているのは、残念なことです。

国家公務員倫理規程は「公務員は国民全体の奉仕者であり、国民の一部に対してのみの奉仕者ではない」「政府の許認可権、補助金、検査・監査の対象となる事業者は利害関係者となる」「利害関係者からの金銭・物品の贈与、供応・接待などを受けてはならない」などとしています。

また「利害関係者と飲食を共にする場合、自己の費用が1万円を超える時は、事前に倫理監督者に届けなければならない」として、会費制、割り勘などによるならば、立食パーティー、私的な会合への出席を条件付き認めています。

官庁が民間から情報を吸い上げるチャネルには「政府の審議会における意見表明、業界団体から要望など、族議員からの工作」など様々でしょう。これらだけでは限界があり、公式、非公式を含め、民間と接触するパイプは必要です。

「民と官との接触の場を官庁内に限る。何か要望をしたければ、官庁の担当部署に来ればよい。裏取引も防げる」という主張も聞かれます。行政には、公式の場では伝えにくいことが少なくないでしょうから、官民の接触には、多様なチャネルがあったほうがよいのです。

高市早苗ら歴代総務相らがNTT社長との会食に臨み、「1万円の会費を払った」とか。NTT社長が設営した会食の費用が1人1万円で済むはずはない。はみ出した金額は接待に相当するのに、「領収書を受け取っている」といえば、責任を問われない。

哀れなのは、更迭された谷脇総務審議官が「会費として5千円を払った。参加費として応分の負担をした」といい、巻口局長が「先方から提示のあった1万円を支払った」と、国会で述べたことです。「5千円とか1万円が応分の負担」とは、信じ難い話です。

子供じみた説明です。省庁側は会食費を予算計上していないので、自腹の分は補填されない。相手側もそれを知っているから、5千円です、1万円ですと、過少の金額しか要求しないのです。

利害関係者との「1万円」を超える飲食の事前届け出件数が新聞に載りました。多いところで「経産省296件、農水省254件」、少ないのは「総務省1件」などです。これで3年分とは、信じられません。

恐らく実際は、それ以上の件数だったと思うのが自然です。「1万円」を超えないように相手方が工作したか、事前届け出そのものをしなかったのでしょう。

実態を反映しない調査を国会審議したり、官僚を責めたりして、時間をむだ遣いしてはなりません。少なくとも、必要な部署の局長級以上には、会食費を予算計上し、行政をスムーズに進めるための必要経費と割り切るべきです。予算を認めたうえで、正しいデータを公表したらよい。

財務省の接待汚職の再発防止から生まれた倫理規程ですから、「官僚に接待費を認めるなんて」が世論の大勢でしょう。「赤字国債が急増している最中に接待費どころではない」も実情でしょう。実現は容易でないにしても、国会は官僚叩きばかりに熱中しても得るものは少ないのです。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2021年3月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。