コロナ対策の背景に存在する世代間の対立

現役世代が高齢者の犠牲

新型コロナウイルスウイルス対策の緊急事態宣言は、21日で全面解除されることになりました。多くの視点がある中で、本音で論じられていないのが「現役世代が高齢者の犠牲になっているのではないか」です。

Fiers/iStock

こういう問題設定をすると、「高齢者を見殺しにしていいのか」という批判が殺到しますから、政治家もメディアも医療関係者も意図的に避けているのだと思います。政府が必死になっている「感染拡大の抑止か経済か」は、「高齢者の保護か、現役世代の重視か」に行きつきます。

欧米に比べ、特に日本のコロナ死者は100分の1か数十分の1です。日本の若い世代、現役世代の死者は、そのまた2割程度でしょう。他国に負けまいとするコロナ対策の負荷がそれらの人たちに集中的にかかっている。

新型コロナ感染がどの程度、深刻であるかをみる指標は病床使用率、重症者数、死者数などがあり、最も重要なのは死者数でしょう。

新型コロナによる日本の死者は累計で8700人です。年代別の内訳をみますと、80歳以上が5000人、70歳代が1800人、60歳代が600人です。死者の約9割が60歳以上で、80歳以上だけで全体の約8割になります。

若い人たちの死者数はどうか。10歳以下はゼロ、20代は3人、30代は16人、40代は63人、50代は180人です。基礎的な体力や免疫力が衰え、病弱な人が多い高齢者に死者は集中し、若い人は死なない。

感染者数はどうでしょうか。東京都の場合、感染者は累計で11万人(全国では45万人)です。これも年代別にみると、90歳以上は2000人、80歳以上は5000人、70歳以上は7000人です。全体の10数%です。

コロナ危機を大局的にみると、働き盛りの若い現役世代、学生、子供は、社会活動するから感染しやすく、全体の8割を占めるのに、死者は極めて少ない。70歳以上の高齢世代は感染者が少ないのに、死者は8割に達する。

ここに本質的な問題が存在しているのに、いいにくい。「若い世代、現役世代はコロナにかかっても、無症か軽症ですみ、風邪かインフルエンザ程度の話。極限すれば、緊急事態宣言とか移動の自粛要請は、死者が多くなる高齢者のための対策を重視」が本音でしょう。

さらに、日本の社会システムには「現役世代の負担によって、高齢化社会が支えられている」という基本的な問題があります。コロナ対策で企業が倒産、営業自粛で現役世代は職場を失い、収入も減っている。コロナ対策のあおりで、高齢化社会を支えるどころではなくなっている。

「高齢者は定額の年金収入があり、失業の心配もない」「個人金融資産は1950兆円に増え、現預金は1050兆円と史上最高。資産のほとんどを高齢者層が保有」「若年層には株高の恩恵はなく、低収入で貯蓄ゼロも増加」「高齢者のためにもっと負担を負えはおかしい」。批判の種は尽きません。

政治もメディアもで彼らの声を伝えようとしていません。それどころか、NHKなどは連日、「新たな感染者は○○人。下げ止まりの気配」のニュースのたれ流しです。

検査を増やしていけば、見つかる感染者数も増え、下げ止まるのは当然です。検査数には触れず、感染者数だけを報道して、いかに深刻な事態であるかばかりを煽る結果を招いています。

陽性者の中には、無症の人も大勢います。ウイルスが体内に侵入し、増殖して始めて『感染』に至る。陽性者の中に『感染者』とはいえない人が多いはずなのに、その説明もない。知事らも言わない。

「表面的なデータを強調して、危機感を煽り、経済活動を過度に停滞させてはならない」を冷静に考えてみるべきでしょう。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2021年3月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。