政府が国会に提出した法案・条約案の条文にミスが多いと、立憲民主党は衆議院の審議を拒否する方針だそうだ。
国際標準化会議に多く携わってきた経験から、立憲民主党の方針には違和感を覚える。
そもそも会議は合意を形成するために実施するものだ。できる限り多数の会議参加者が満足するために、「少数意見の尊重」と「多数決」という一見矛盾する規則が定められているのは、会議が合意形成のためプロセスであるためだ。
原案を議論する過程では参加者は修正を提案できるが、修正には「内容上の修正」と「編集上の修正」の二種類がある。
内容上の修正というのは、例えば、「3年間に渡り」消費税課税を停止するという原案を、「会議(この場合は国会)が改めて決議するまで」と変える修正である。
一方、編集上の修正とは誤字脱字の修正などを指す。
それでは、内容上の修正は編集上の修正よりも立派な提案なのだろうか。実はそうではない。編集上の修正をしないと合意の正確な内容が、合意を読む読者に伝わらないからだ。国会の場合は成立した法律が合意を示すが、誤字脱字を含む不正確な法律は正確な執行を妨げる。
内閣が提出した法案に誤記があったら、立憲民主党は編集上の修正を提案するのが筋だ。政府も与党もこの修正提案には応じざるを得ない。今までは野党の修正提案は否決されるばかりだったが、編集上の修正に貢献すれば、野党としての存在価値は高まる。
国際標準化会議は国際会議の一種で、ほとんどすべての国際会議は「ロバーツの会議規則」を基に運用されている。この記事に書いたことも「ロバーツの会議規則」を勉強すればわかるので、立憲民主党には一読を求めたい。