続・行政DXに猶予はない

デジタル社会形成基本法案・デジタル庁設置法案等が国会に提出され、政府はデジタル・トランスフォーメーション(DX)に動き出した。人口動態の変化といった長期的なトレンドも、新型感染症への対応といった短期的な課題も、経済社会のDX、とりわけ行政DXを強く求めている。

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情報通信政策フォーラム(ICPF)では、「行政DXに猶予はない」と題するセミナーシリーズを開催してきた。前回の日本維新の会に続き、国民民主党の玉木雄一郎代表にも3月25日に講演いただいた。玉木氏が登壇したセミナーの模様は後日ICPFサイトに公開するが、国民民主党が経済社会のDXに積極的であるとよくわかった。

本人が望まないデータの利用が起きないように「データ基本権」を憲法改正して定めようというのが、玉木氏の主張である。その理由は経済社会におけるデータの活用を一層進めるため、これからますます進む活用とのバランスを取るために、データ取扱いの自己決定権を憲法で保障しようという考え方である。

同じセミナーに登壇した藤田卓仙氏(世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター)は、データ(個人情報)の利用は事前同意が原則だが、公益目的のためには同意を得ずとも利用できるAuthorized Public Purpose Accessといった新しい仕組みも設けるのがよいと主張した。

セミナーシリーズには自由民主党、公明党、日本維新の会、国民民主党に登壇いただいたが、DXに消極的な政党は一つもなかった。立憲民主党にも講演をお願いしているが、今のところ返事はない。

そんな中、日本共産党の「しんぶん赤旗」にデジタル関連法案への反対論がほとんど毎日掲載されているのを見つけた。

もっとも気になったのは、3月18日付の「行政サービス後退」と題する記事で、次のように書かれていた。

塩川氏は、妊娠届の受付時に独自の聞き取りをし、経済的困難やDV(配偶者等からの暴力)の早期発見・支援につなげている政令市の例などを挙げ、「行政窓口の申請・届け出の受け付け業務は、生活の悩みや相談事に応じる場だ。デジタル手続き推進は、対面手続きの縮小・廃止につながる」とただしました。

少子高齢化が進み生産年齢人口の減少が続くというのが長期的なトレンドである。このトレンドの下で経済社会を維持するには、行政職員数も削減せざるを得ない。そこで、デジタルで済む人はそれで済ましてもらい、生活の悩みや相談事を抱えた人には窓口で応じるというメリハリを付けるのが、デジタル手続きの導入である。今まで通り何でも窓口で対応し、何の問題もない手書きの申請書も行政職員がタイプし直してデジタル化する非効率では、窓口は早晩破綻するからだ。

長い時間軸で考えない日本共産党の姿勢は問題である。玉木氏の主張するデータ基本権は一考の価値があるが、憲法改正絶対反対政党が議論すら阻んでいるのも、21世紀的ではない。