米国アクセス委員会は、自動走行車の概念設計について、公開フォーラムを連続開催している。第3回は視覚・聴覚障害者による自動走行車の利用で、その内容が公表された。
フルスペックの自動走行車が完成すれば、自動車を「運転する」必要はなくなる。わが国でも、警察庁が道路交通法改正を視野に免許制度などについて議論を始めている。
それでは、フルスペックの自動走行車は誰でも簡単に利用できるのだろうか。第1回・第2回のフォーラムで議論されたように、車いすの利用者には乗降の容易さという課題があり、また、車内で車いすを固定し安全を確保する方法についても研究開発が必要である。
視覚障害者が利用するとしたら、何に配慮したらよいのだろうか。
Rutgers UniversityのFeeleyらは、21名の全盲・弱視の被験者を集め試乗実験を行った。被験者は試乗直後には「素晴らしい」という感想だったという。雇用・教育、そして何よりも外出の機会が広がると感じたからだ。
しかし、いくつかの課題も見つかった。
自動走行車に指示するためには、複数の手段を用意する必要があるというアクセシビリティの課題。安全の確実な確保も重要で、視覚に障害のある利用者の不安を解消するには同乗者による支援が必要という意見も出たという。
「デパートまで」と指示して自動走行車が動き出しても、本当にデパートまで連れて行ってくれるのか心配という利用者の気持ちは理解できる。
University of MichiganのRobin N. Brewerも、全盲・弱視の利用者に配慮すべき設計要件について講演を行った。視覚に障害のある利用者が乗車中と他の自動走行車に伝えれば安全性は高まるが、利用者のプライバシーが問題になる。
フルスペックの自動走行車であっても、人々には「視覚障害者が一人で利用して大丈夫なの?」という心のバイアスは残る恐れがある、という指摘もしている。
Gallaudet UniversityのChristian Voglerは聴覚障害者による利用について講演した。聴覚障害者にとっては、自動走行車とのコミュニケーションがすべての問題であるとして、音声の代わりにジェスチャーでの指示も可能にするなど、複数の入力手段が必要であると指摘した。
自動走行車への指示を複数の手段でできるようにすることなど、視覚・聴覚障害者の指摘は具体的で、すぐに概念設計に反映できる。フォーラムの資料は委員会サイトで公開されている。
第1回の様子は「アクセシビリティ政策で米国との大差を取り戻すために」、第2回は「誰もが利用できる自動走行車を目指して」をお読みいただきたい。