小室氏を叩いても宮内庁は不問の不思議

新聞各紙は静観の構え

眞子様の婚約者である小室圭氏が先週、母親の金銭トラブルなどについて、28㌻もの説明文書を公表しました。騒ぎは一向に収束せず、「釈明より先に借金を返すべきだ」など小室氏への批判が噴出しています。

小室圭氏 NHKより

こんな大きな問題になる前に、つまり婚約発表に至る前に、どうして宮内庁側が小室氏の身辺調査をして、秋篠宮に伝えなかったのだろうかと思います。秋篠宮も眞子様から結婚の意思を聞いた時に、なぜきちんと調べてみる気持ちにならなかったのでしょうか。

文書の発表後、西村宮内庁長官は「私は小室氏の理解者になる。事実関係について文書は丁寧に説明しており、理解できた」と語りました。これで一件落着にしたいという気持ちだったに違いない。

この問題が大火になるのをなぜ未然に防げなかった。宮内庁側の責任は重い。そのことを多くの週刊誌、発言を続ける識者たちはほとんど触れていません。叩きやすい小室氏に批判が集中するのはおかしい。

私もブログで取り上げたところ、知人らの感想は「結婚なんてあり得ない。税金を使われている皇族のことですから、こんな男性との結婚は絶対に認められない」(女性)、「相思相愛なら皇室をさっさと離脱して、二人は結婚すればいい」(男性)と、二分されています。

私はどちらかといえば、後者の意見です。男性皇族の結婚は皇室会議の承認(皇室典範10条)が必要なのに対し、皇籍を離脱する皇族女子は承認を必要としない。きちんと事前調査をしなかった理由もそこにある。

お二人に結婚の意思があるならば、憲法の規定「婚姻は両性の合意にのみに基づく」(24条)を無視できない。皇室が憲法違反をするわけにはいかない。父親の秋篠宮も「両性合意ということがある以上、そうでないというようには、私はできない」と、苦渋の気持ちを語っています。

本来なら、母親の金銭トラブルや父親らの不透明な影を考えれば、小室氏は皇女との結婚を考えるべきではありません。そうであっても、お二人は相思相愛の仲に進んでしまっているのですから、もう誰にも止められない、止めてはならない。

新聞各紙も、紙面の扱いはあっさりしており、この問題に深入りしたくないといった感じです。旧皇族の皇籍復帰、女性・女系天皇の拒否を論調とする復古調の産経は「女性継承は別の王朝による皇位の簒奪になる」との主張を掲げてきた産経新聞も、なぜかおとなしい。

小室氏批判が噴出する中で、私が不思議に思うのは、宮内庁の関わり方のずるさです。加地皇嗣職大夫が記者会見で「金銭トラブルの報道以来、眞子様は小室氏の対応について相談に乗ってきた」と、発言しました。

秋篠宮の側近である大夫が、なんでそんな立ち入ったことまで明らかにするのか、その真意はなんだろうと、私は思いました。大火になった責任を小室氏ばかりでなく、眞子様になすりつけるような態度です。

トラブルの原因は眞子様、さらに秋篠宮側にもあるという批判も浮上しています。そうした批判の本音を探れば「そのような眞子様を女性宮家の対象者にしてはならない」「秋篠宮も問題だから、やはり旧宮家の皇籍復帰が必要である」ということになるでしょうか。

眞子様の結婚(入籍)が今秋(10月ころ)にあると仮定しても、女性宮家の創設を含む皇位継承策を検討する有識者会議の結論は、秋が有力視される総選挙後にするだろうし、法改正(皇室典範)はさらに後になる。従って、眞子様は女性宮家の対象者になりえません。

旧宮家についていえば、存続しているのは、11のうち5つとされ、未婚の男系男子は8人程度だそうです。その皇籍復帰を主張しているのが、安倍前首相を支えていた日本会議、超保守派、新聞では産経(だけ?)です。

旧宮家の男系男子に皇族に復帰するにふさわしい人物はいるのかどうか。プライバシーにかかわりますから、オープンにできないにしても、平成天皇、令和になってからの天皇がどのように考えてきたのか。

平成天皇の美智子妃、今の天皇の雅子妃は民間人です。平成天皇の皇女だった清子さんは都職員に嫁いでいます。旧宮家、旧華族などにこだわらない自由なお気持ちなのでしょう。旧宮家の復活は、それを推す人たちの動機をあれこれ想像してみましょう。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2021年4月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。