菅総理の訪米直前になって、二階幹事長から「オリンピックをスパッと中止も」の発言が出た。「中止」という言葉は政府・与党には禁句だと思っていたのでビックリだ。
この発言の裏を勘繰ってみた。米国バイデン政権は中国に対して厳しい態度に出ており、台湾に非公式な特使を送っている。開かれた南シナ海からインド洋、そして太平洋を守る要として台湾の位置づけがますます重みを増している。米国は、台湾を中国の一部として認めていたところから一歩踏み出す可能性があり、当然ながら、日本にも同調を求めてくる可能性が高い。
1国2制度であったはずの香港の激変を見て、米国は太平洋への出口となる台湾を憂慮しだしたのかもしれない。そこで鍵となるのが、菅総理との日米首脳会談後の共同宣言である。親中派の二階幹事長にとって、「日米が共同で台湾を守る」ような趣旨が盛り込まれれば面子丸潰れとなる。そこで、「訪米中に勝手なことをすると、オリンピックは吹っ飛ぶぞ」という牽制球を投げたのが、冒頭の発言の趣旨ではないかと勘繰っている。オリンピックを開催したいと考えている政権にとって、心が凍てつくような一言になったと思う。
米中が貿易のレベルで争っているだけなら高みの見物でいいが、政治的な対立となると日本の立場は難しくなる。福島の処理水の海洋放出も、米中で態度が分かれ、中国は厳しい態度を崩していない。現状の日本のコロナ対策を容認して、参加国が選手団を送ってくる保証はどこにもない。どこから考えても、日本のコロナ対策を是とする理由がない。第3波から第4波に転じた時間の短さは、日本の対策に致命的な欠陥があることを示している。
まさに、内憂外患の日本だ。
編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2021年4月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。